自民党は広島で勝利する「1勝1敗1不戦敗」を狙っていた

菅義偉政権が発足して初めての国政選挙となる参院広島選挙区の再選挙、それに衆院北海道2区と参院長野選挙区の補欠選挙が4月25日に投開票され、自民党が全敗した。

衆参3選挙で自民党が全敗したことについて、記者団の質問に答える菅義偉首相(左)=2021年4月26日、首相官邸
写真=時事通信フォト
衆参3選挙で自民党が全敗したことについて、記者団の質問に答える菅義偉首相(左)=2021年4月26日、首相官邸

北海道2区は候補者の擁立を見送った不戦敗とはいえ、自民党が敗れたことには違いない。

自民党は保守王国の広島で勝利を収める「1勝1敗1不戦敗」を狙っていた。ところが、結果は3戦3敗だった。今後の菅首相の政権運営にとって大きな打撃である。一方、立憲民主党、国民民主党、社民党などの野党陣営は今回の善戦で活気づいている。

ちなみに勝者の顔ぶれは、次の通りである。

与野党が対決した参院広島選挙区では、野党各党が推す諸派の宮口治子氏(45)が自民党の西田英範氏(39)を破って初当選した。衆院北海道2区は野党統一候補の立民の松木謙公氏(62)が、参院長野選挙区も立民党が勝って羽田次郎氏(51)が当選を決めた。

新型コロナ対策への不満と政治とカネの問題は深刻

投開票翌日の26日午前、菅義首相は官邸で「国民の審判を謙虚に受け止め、さらに分析をしたうえで、正すべき点はしっかり正していきたい」と語ったうえで、政治とカネの問題について「自民党総裁として重く受け止めたい」と述べた。また、衆院解散の判断に与える影響には「常日ごろから申し上げているが、新型コロナウイルス対策を最優先に取り組んでいくという考え方に変わりはない」と説明した。

衆参3選挙の争点は、①菅政権の半年の評価、②政治とカネの問題、③新型コロナ対策の3つだった。

なぜ菅政権は全敗したのか。北海道2区補選は、収賄罪で在宅起訴された元農相の吉川貴盛氏(自民党離党)の議員辞職に伴うもので、「勝ち目が薄い」と当初から自民党は候補者の擁立を見送った。

広島再選挙は2019年の参院選を巡る買収事件で有罪が確定した河井案里氏(自民党離党)の当選無効に伴って行われたもので、やはり自民党の政治とカネが大きな争点となり、自民党に対する信頼が崩れ、自民支持がかなり減った。

長野補選は新型コロナに倒れた元国土交通相の羽田雄一郎氏(立憲民主党)の死去に伴う選挙で、雄一郎氏の弟の羽田次郎氏が野党各党の支持を得て与野党一騎打ちに勝利した。

全敗の理由は、有権者の新型コロナ対策への不満と自民党が自ら招いた政治とカネの問題だと整理できる。