校舎数を伸ばし続けている武田塾

このビジネスモデルを、高校生ターゲットに切り替えて、校舎数をみるみる伸ばしているのが「武田塾」である。2004年の創立以来するすると校舎数を伸ばし、現在では全国380校の展開を誇っている。

もちろん、高校生の指導ともなると、公文のように「近所のおばさん」による指導という訳にはいかないが、とはいえ集団授業や密着型個別指導に比べ、「自習サポート型の塾」であればはるかに効率的に運営できることは想像に難くない。

授業風景
写真=iStock.com/Milatas
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そして、この2つの企業は、どちらもそのビジネスモデルの汎用性の高さ故に、フランチャイズとして校舎の展開を行っている。つまり、「客に作業をさせる」というビジネスモデルで「ローリスクの校舎展開ノウハウ」を作り上げ、そのノウハウをフランチャイズ本部として提供しているビジネスである、と考えられるのである。

無料で宣伝要員を集める東進ハイスクールの戦略

「作業を客にやらせる」のが公文であるならば、「宣伝を客にやらせる」のが東進ハイスクールである。「今でしょ」で一躍有名になった東進だが、地上戦での宣伝にも抜け目がない。

というのは、東進は、少なくとも私が東大に合格した年度では「他の予備校の模試でA判定を取った生徒」を「東大特講」という講義に無料で呼び、その受講者を合格者数にカウントしていたからだ。

現時点でどのような運用になっているかは存じ上げないが、少なくとも2000年代においてそのような運用が行われていたことは間違いない。私もありがたいことに無料で受講させて頂き、そして、東進には1円も支払っていないにも関わらず、合格者氏名にも名前がしっかりと乗っていた。

要するに、東進にかぎらず、予備校ビジネスにおいては、「金を払う客」と「合格者実績を稼ぐための客」が分かれており、後者は宣伝のネタとしての客なので、金を払ってもらわなくてもよいという仕組みになっているのである。

そもそも成績が良い生徒を無料で呼べば、合格者数実績が伸びるのは当たり前だ。冷静に考えると、塾の実力というのは、合格者数ではなく、学力をどれだけ伸ばしたかで図られるべきなのだが、実際のところ測定するのは困難なので、目先の合格者数を増やすことで顧客を獲得するのが一番効率の良い宣伝手法なのである。