1年に及ぶコロナ禍の在宅勤務のため運動不足で体力・筋力が低下している人が増えている。厚生労働省によれば、運動不足による国内の死亡者数は、喫煙、高血圧に次ぐ第3位でその数は年間約5万人に及ぶ。スポーツライターの酒井政人さんは「自宅で簡単な筋トレや一定のリズム運動であるランニング・ウォーキングなどをすることで心身の調子を整えることができる」という――。
運動
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コロナ禍の在宅勤務の運動不足で体力・筋力が低下する人が増加

緊急事態宣言が3月21日に全面解除されたが、コロナ禍で変貌した日本人の生活は元には戻りそうもない。政府は引き続き「不要不急の外出・移動自粛」(散歩など生活や健康の維持に必要な外出は除く)を呼びかけている。新規感染者は近頃また増える傾向にあるため、日々の生活でも外出する機会は以前より少ないままとなる人が多いだろう。

多くの企業は「出勤者数の7割削減」を目指して、テレワークを導入。打ち合わせなどもオンラインが中心となり、ビジネスシーンでの移動は大幅に減少した。

テレワークを歓迎する人がいる一方、“通勤体力激減”を実感している人もいる。電車通勤の場合、自宅から駅までと駅から会社までの往復(徒歩、自転車など)。それから乗り換えを含めて駅構内の移動もある。駅構内では階段を昇降する機会があり、車内は座れないことも少なくない。出勤するだけでも“適度な運動”をしていることになる。

しかし、それがなくなることで運動量は減少。筋肉量が低下すると、以下のような“デフレスパイラル”を引き起こす可能性がある。

筋力低下→姿勢の悪化→血流が悪くなる→体内の疲労物質が滞る→気分が落ち込みやすくなる

運動不足は心身に不調をきたすリスクとなる。また筋力が低下すると疲れやすくなり、血流が悪くなると頭痛などの原因にもなる。テレワークで脳を酷使しても身体が疲れていないと、心身のバランスが崩れて、睡眠障害につながる恐れもある。

20代でも運動をしないと50代並に筋肉量が低下することも

デンマークのコペンハーゲン大学の研究チームが2016年に国際医学誌「ジャーナル・オブ・リハビリテーション・メディシン」に発表した内容によれば、2週間という短い期間でも下半身をまったく動かさなくなると、脚筋力が若者(平均年齢23歳)で28%、高齢者(同68歳)で23%低下。筋肉量は若者で485g、高齢者では250g減少したという。

実験後、参加者は週3~4回の自転車トレーニングを6週間続けたが、高齢者は失った筋力を取り戻すのが難しいことも判明した。失った筋肉をもとに戻すのに他世代の3倍以上の時間が必要になると考えたほうがいいようだ。

若い世代も油断はならない。筋肉量は年齢を重ねるにつれて減少する傾向にあるが、20代でも運動をしないと、50代並に低下することも十分にある(逆に50~60代でも筋肉量のアップは可能)。

厚生労働省によれば、運動不足による国内の死亡者数は、喫煙、高血圧に次ぐ第3位でその数は年間約5万人に及ぶ。同省の資料では「運動不足が原因で毎年5万人が死亡している」との記述がある(2019年「身体活動・運動を通じた健康増進のための厚生労働省の取組み」内の「2007年の我が国における危険因子に関連する非感染症疾病と外因による死亡数」というデータ)。運動習慣が認知症やがんの発症率にも関与しているという。在宅勤務が多い人ほど、「運動」することを考えていくべきだろう。

【図表】運動不足が原因で毎年5万人が死亡している
出所=厚生労働省