日本のお笑いは中国でもウケる
──3本柱の最後であるアジア戦略はどうか。中国では、19年に上海で吉本新喜劇を上演しているし、中国国営放送テレビ局(CCTV)などからなる中央広播電視総台(CMG)や、中国メディア大手の上海メディアグループ(SMG)などと提携を進めている。
僕が初めて中国を訪ねたのは30年前の1990年。30年間に何度も中国に通って、老朋友(親友)もできた。そのままダラダラと「中国に老朋友がいますよ」で終わってしまうと思っていたら、日中両政府が協調していきたいという流れに変わった。
ビジネスでも日本は人口減少でマーケットが縮小しているため、隣国の巨大マーケットとどう向き合っていくかというのが、日本のビジネスパーソン一人一人の大きな課題だ。そこで、生き残りのチャンスと捉えて、中国をはじめとしたアジア戦略を掲げた。
具体的には、中国のメディアと共同でコンテンツの企画開発・制作を行ったり、日中の若者の人材育成と交流を行ったりしていく。
──パンデミックの影響で習近平国家主席の来日が中止となるなど日中間の交流が停滞しているが、吉本興業のアジア事業の現状はどうか。
中国との連携は、コロナにかかわらず粛々と進めている。中国や韓国といった国々とは、政治的には衝突することがあるが、隣の国なのだから政治とは別にエンタメや芸能の交流は進めたほうがいい。エンタメで交流が進んだら、どういうものが生まれるのかは未知数で、アジアも地方創生とデジタルと同様にチャレンジだ。
国境も、地域差も、メディアの壁もなく、吉本はあらゆるボーダーに挑戦し、新しいエンタメをつくっていきたい。
(取材・構成=結城遼大 撮影=市来朋久)