隣人としてはどう対処すればいいのか。マンションをめぐるトラブルに詳しい秋野卓生弁護士に聞いた。

秋野「隣人に個人的に抗議するよりも、まずはマンションの管理組合に相談することです。プライバシーの問題があるので、隣の部屋の中を確認することはできません。ベランダで3匹くらいの猫を見かけたものの、泣き声や悪臭から察してもっと飼っているだろう――そう思っても無理はありませんが、隣人同士で争っても限度があります。

ペット飼育のトラブルは後を絶たない。マンションの居住者間で発生したトラブル
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ペット飼育のトラブルは後を絶たない。マンションの居住者間で発生したトラブル

マンションには管理規約があり、そこにペットの飼育禁止とあれば規約違反なので、管理組合から注意を促してもらうことができます。ペットに関する管理規約がないのなら、規約変更にかかわる総会を開いて新たなルールづくりをしてもらう。

私が担当した裁判では、階上の住人が猫のブリーダーで、ベランダに猫用トイレを置いていた。悪臭が漂うため、飼い主はそこにクレゾールなどの薬剤を撒いたんです。そのせいで階下の住人が頭痛などの化学物質過敏症になってしまった。階下の住人が訴訟を起こし、一審で勝訴、二審で和解となったのですが、部屋の調査をすることができない点で苦労しました。猫が何匹いるのかもわからないし、飼い主は『薬剤なんて撒いてない』と主張する。それで、近隣の住人に聞き取り調査をして立証したのです。

健康被害の有無にかかわらず、近隣にあまりにひどい迷惑をかけている場合には、停止請求することもできます。動物愛護管理法の第25条を受けて各自治体で条令を定めています。賃貸マンションであれば出ていってもらう。区分所有ならば、場合によっては競売にかける、という強行手段も考えられます。

『ゴミ屋敷』で近隣が迷惑を受けている場合も、やはり管理組合に相談すべきでしょう。あまりにひどいケースは『用途違反』が主張できます。倉庫として貸しているのではない、ということです」

○動物愛護管理法 第25条 「都道府県知事は、多数の動物の飼養又は保管に起因して周辺の生活環境が損なわれている事態として環境省令で定める事態が生じていると認めるときは、当該事態を生じさせている者に対し、期限を定めて、その事態を除去するために必要な措置をとるべきことを勧告することができる」

(須藤靖貴=構成 岡本 凛=撮影)