読書でも必要な知識だけをインプットする

そもそも、多くの場合、「何冊も本を読むこと」自体が目的になっている場合が多いですね。手段と目的が逆転してしまうから、うまくいかないのです。

逆に東大生は、「何冊も本を読む」ことを目標にはしません。「知識を得たい」のであれば、どんな知識が欲しいのかをしっかり明確にしてから本を読むので、数ページ読んで「ああ、この本は自分の持っている知識以上の内容は教えてくれないな」「欲しい知識を得られる本じゃないな」と思ったらそもそも買いませんし、買っている場合でもすぐに読むのをやめてさっさと古本屋に売りに出します。「損だな」と思ったらすぐに切るのです。

そして、この「こういう知識を得たい」という解像度がとても高いのです。「この分野の、この領域の、こういう場面で使えるような、こういう知識が欲しいんだよな」ということを細分化して明確にしているのです。

例えば「ある分野の基礎的な知識を得たい」と思った場合、「取りあえず基礎の部分の知識を得たいわけだから、基礎じゃない部分は省いて読もう」と解釈し、応用的な内容があればすぐに切り捨てを行います。目的とは異なるのですから、当然です。このように、目的が明確なら、ムダな努力をする時間もないのです。

では、東大生は「目的を明確にする」能力をいつ身につけているのでしょうか?

これは、私は「受験の時だ」と考えます。

受験勉強は、圧倒的に「どこまで目的を明確にできるか」の勝負です。

大抵の人は「勉強して、その結果がテストで測られる」と考えていると思いますが、逆です。「テストで問われる能力を分解して、どんな勉強が必要なのかを考える」という逆算こそが受験で最も必要なことなのです。

塾で勉強している中学生
写真=iStock.com/Milatas
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「12分で7点取れるようにこの範囲の訓練をしておこう」という発想

例えば、東大生は模擬試験で毎回、各科目・各大問の目標点数を1桁レベルで明確に設定しています。

「英語の2Aの問題は自由英作文で12点の配点だから、7点獲得できればいいはずだ。これにかけられる時間は12分程度なので、12分で7点取れるようにこの範囲の訓練をしておかなければならない」

全ての大問・全ての問題で、このレベルの細かさで目的明確化を実践しています。

翻って、多くの人はテストで細かな目標点数を決めているでしょうか?

「良い点取れればいいな」と思っているかもしれませんが、その「良い点」って何点なのでしょうか? 割とこれを考えずに勉強している人って多いですよね。どの科目のどの分野のどの問題で何点取るのか明確になっていないから、ダラダラした勉強になってしまっている場合が非常に多いように感じます。かく言う私も、以前は漠然と「いい成績が取りたい」とだけ考えていて、成績が伸び悩んでいました。頑張って努力しても、目標が明確でないから成績が思うように伸びない経験をしたのです。