なぜ、今の子ども世代がここまで親の介護問題を考えるのか?

明石さんのように、親の介護費用について把握しておきたい、どう備えればよいか知りたいといった相談は増えている。年代的には50代~60代が中心だが、中には40代から相談を受けることもある。どこかしら今の子ども世代は、親の介護に直面することを怯えているようにも見える。

手すりを持ち、階段を降りる年配の女性
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くり返しになるが、介護される側の親世代は介護の経験がほとんどないという人も珍しくない。「そういえば、(親の介護は)していませんね。当時は、同居する家族が面倒をみるか、病院に入院してそのままとかだったでしょうか」といった高齢者が多い。

では、なぜ今は変わってきたのか? その理由として、次の3つが考えられる。

①高齢者の増加・医療の進歩による長寿化

人口は減少しても高齢者数(とくに75歳以上)は増え続けている。さらに、医療が進歩したことで、がんや脳卒中、心筋梗塞といった重篤な病気にかかっても、すぐには死亡するような事案が減った。その反面、再発や重症化のリスクは高まり、一定の介護期間がかかるようになってきた。

②家族のスタイルの変化

核家族化が進み、同居家族が減り、介護の担い手が少なくなった。共働き世帯の増加で、従来の「同居する長男の嫁が義両親の直接介護をする」などは、もはや期待しにくい。

③少子化

きょうだいがいなければ、両親の介護(あるいは未婚の伯父伯母など)を子ども一人で担うことになる。また、きょうだいがいても、疎遠になっていたり、きょうだい間の暮らしの経済格差があったりして、協働しにくい。

要するに、ひと昔前であれば、高齢者が何か病気にかかれば「あとどれくらい」ということが家族はなんとなく理解できた。また、子どもの数や同居家族も多かったので、家族が分担して直接介護をしたり、長男の嫁が世話をしたりといったことも多かったはずだ。

実際、私が話を聞いた介護経験者の中には、嫁ぎ先の祖父母と両親、自分の親の合計6人の介護をしてきたという60代女性がいた。彼女は苦笑しながら言うのだ。

「本当に介護するために嫁にきたようなもんですよ。昔はそれが当たり前で、誰にも愚痴をこぼせなかったけど、もう大変でした。介護をするのもされるのも、もうこりごり。自分の子どもには、親の介護は絶対しなくていいからね! って言い聞かせてますよ」

小柄ながら元気いっぱいといった雰囲気の女性で、大変だったと苦労話を話しながらも、介護をやりきった自信と満足に満ち溢れていたのを覚えている。