これから不動産価格の下がる街はどこか。住宅ジャーナリストの榊淳司氏は「期待感だけで不自然に不動産価格が上がったエリアは危ない。その典型は東急田園都市線エリアだ」という――。(第2回/第2回)

※本稿は、榊淳司『ようこそ、2050年の東京へ 生き残る不動産 廃墟になる不動産』(イースト新書)の一部を再編集したものです。

三軒茶屋(東京都世田谷区、2017年1月15日)
写真=時事通信フォト
三軒茶屋(東京都世田谷区、2017年1月15日)

不動産価格が下がる可能性がある田園都市線沿線

2020年に蔓延している新型コロナウイルスは、世界的な経済不況を招くことは確実だ。

当たり前だが、不況期には不動産価格が下落する。今後、東京の都心や近郊で劇的に住宅の価格が下落するエリアも出てきそうだ。

どういうエリアかと言うと、街としての個性や魅力が薄いわりには、2013年以降の局地バブルなどによって生じた空気感や期待感で、不動産価格が不自然なまでに上昇したエリアだ。

その典型は東急田園都市線沿線ではないかと思う。

この沿線には、市街地としてのさしたる歴史はない。50年前は、ただ世田谷から川崎の丘陵エリアを通って、そのまま相模原方面へとつながる路線だった。

それが1983年に始まったTBSのTVドラマ「金曜日の妻たちへ」の大ヒットとともに、一気に人気となった。その頃から田園都市線は、俗に「金妻ライン」などと呼ばれるようになる。

しかし、この路線は交通利便性の他にはこれといった魅力がない。沿線の街は主に東急不動産が中心となって開発されたので、それぞれが見栄え良く仕上がっている。

住宅地の街並みもそれなりによく整っているところが多い。それが中堅所得層に好まれ、人気化したわけだ。ただ、この沿線の人気は次世代へと引き継がれるだろうか。この沿線で育った子どもたちは、大人になってまた戻って来て、この沿線でマンションを買うだろうか。

私はこの沿線にそこまでの魅力はないと思う。つまりは、上手な演出で街づくりとイメージ作りには成功したが、そもそもの実力がともなっていなかったのではなかろうか。