社会から見捨てられる中年男性

【中村】使えなくなった中年男性が無人島に輸送されて、劣悪な環境で介護させられても、若者は当然、人権派も動かない気がする。本土に戻してまた偉そうにされたり、ネット上で誹謗中傷されても厄介なだけだし。

病気
写真=iStock.com/toyoshima akiko
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【藤井】今後増えていく子どものいない老人の面倒を誰が見るのか。

国が面倒を見るということになれば、コロニーを作って、認知症老人をどんどん入れて、ある程度体力のある、街にあふれた中年男性をケアワーカーとして入れていく。ありえますね。

しかも、60年代後半から70年代にかけては障がい者の人たち自身が当事者として反対運動を起こしたけれど、認知症の人たちは運動を起こすことさえできない。そうなると本当に悲惨ですね、いやあ、怖い。

【中村】国がやろうと思えば、ポエムや国家資格を駆使して、老人の介護に失業者を集めるのは簡単にできることだと思う。

噓に噓を重ねても、中年男性が目をキラキラさせるやりがいのあるものにして、誇り高い気持ちで無人島に行ってもらえばいい。実際に今の介護職もポエムで育成されているから、低賃金なのにすごくプライドが高い。でも、実際の介護保険制度の介護職は裁量がまったくないんです。

【藤井】介護保険が点数制だということとも関連しますね。

この点数制は医療保険もそうですね。キュア(治療)とケアはまったく違う。明治時代以降、近代化=工業化の過程で作られた医療システムをそのままケアの分野に当てはめたことが、大きなむずかしさを生んでいるのかもしれませんね。

介護職にクリエイターは必要ない

【中村】本当にただの部品みたいに働かされている。ベストセラーになった北野唯我さんの天才・秀才・凡人理論を変形させて、介護現場をみながら「クリエイター・ビジネスマン・凡人理論」というのを作ったんです。

作ったというか、僕が言っているだけなんだけど。介護職はとにかく凡人が著しく多い。

凡人の群れにクリエイターがはいって、才能を発揮してしまうと凡人に袋叩きにあって追いだされてしまう。そして、介護職をポエムで綴るビジネスマンはリスペクトされる。

ビジネスマンはクリエイターに憧れがあって、敬意を払っているんだけど、凡人の介護職はとにかくクリエイターをイジメ抜くみたいな。実際、そんな感じです。

【藤井】ケアの天才っているみたいですからね。ケアしてもらう人の気持ちを誰に言われなくても自然と汲めるとか、もともと長けた人がいる。それはケアされる側にとってもうれしいし、とてもいいことだと思っていたのですが、叩かれるんですか。

【中村】ケアの天才は微妙ですが、どんな部門でも才能がある人は、介護職から本当に嫌われます。創造性があることはダメで、視界の範疇でも何人もイジメ抜かれている。

【藤井】でもケアワークって、相手によって求めるものが違うので、発想の自由、裁量がむしろ必要な仕事ですよね。むしろマニュアル化できない。