日本社会が中年男性を見捨てつつある。ノンフィクションライターの中村淳彦氏は「中年男性が失職した場合、数少ない働き口のひとつが介護業界だ。しかしそこではやりがい搾取が常態化している」という――。(第2回/全3回)

※本稿は、中村淳彦、藤井達夫『日本が壊れる前に 「貧困」の現場から見えるネオリベの構造』(亜紀書房)の一部を再編集したものです。

うつ病
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行き場のないホワイトカラー中年男性

【中村淳彦(ノンフィクションライター)】もう一度、中年男性のこれからについて、最後に述べておきます。

コロナ前の段階で、女性の状況は限界まで悪化している。生活保護の最低生活費や相対的貧困の基準を最悪だとすると、これ以上、貧困化は進まない。

女性の貧困は完了、終了だとすると、次に貧困のターゲットになるのは中年男性となる。彼らは社会的強者として扱われるし、いままで再分配を与える側だったので風俗の道も、売春の道もないわけです。介護現場も当然いらないし。

【藤井達夫(政治学者)】いま、かろうじて残っているのはガードマンですよね。工事現場では、かなり高齢のおじいさんたちが警備員をしています。きっとすでに供給過剰状態で、今後路上にあふれる失職男性の受け皿にはならないでしょう。

【中村】融資してコンビニオーナーをさせて超長時間労働をさせるとか、配達や清掃、引っ越し屋とかですかね。僕は介護現場を眺めて国ってこういうことをやるんだ、って勉強したんですけど、リーマンショックのとき、国は介護職で雇用の調整をしていた。

厚生労働省は介護の担当省庁で、安倍政権は失業率の低さを完全に売りにしているから、とにかく介護に失業者を流すことをした。今回のコロナでは、今のところそのような動きはないですね。

【藤井】失業者を介護産業に流し込んだわけですか。

【中村】もう、露骨にそうでした。