2011年1月14日(金)

売り上げ3倍「山スカート」はなぜ、女心をつかめたか

PRESIDENT 2010年12月13日号

著者
野口 智雄 のぐち・ともお
早稲田大学社会科学総合学術院教授

1956年、東京都生まれ。一橋大学大学院博士後期課程単位修得後、横浜市立大学助教授を経て94年から現職。2006年から08年まで、客員研究員としてスタンフォード大学経済学部で活躍。88年、『現代小売流通の諸側面』で日本商業学会賞を受賞。『水平思考で市場をつくるマトリックス・マーケティング』『なぜ企業はマーケティング戦略を誤るのか』など多数の著書がある。

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早稲田大学社会科学総合学術院教授 野口智雄=文
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いまやアウトドアを楽しむ女性の間では当たり前の存在となった山スカート。2年前までは“ありえない”ファッションだったこのスタイルがなぜ人気を集めるのか。男くさいアウトドア用品メーカーが女心をつかむまでを取材した。

常識外れのちゃらいファッションが定番になるとき

「山を舐めているのか!」

2008年、デサントでアウトドア商品の開発を担当する下平佳宏氏が山スカートのアイデアを社内に提案したときに上がった言葉である。すでにこの時期、他社が販売してはいたものの、その成果は微々たるもので、登山にスカートという出で立ちは「ありえない」スタイルだった。

それも当然だろう。勾配のある山で下から覗かれる可能性があるスカートをわざわざはく道理はないからだ。登山用のパンツ(長ズボン)をはけばよいのだ。山の崇高さや恐ろしさを知る人ほど、こんなちゃらいファッションに眉をひそめたことだろう。

ところが今、この常識外れのスタイルで登山する女性たちが急増し、山スカートは若い山好き女性の定番ファッションとなりつつある。モンベル、ゴールドウイン、ミズノ、エーグル、コロンビアなど、デサントのほかにも名だたるアウトドア用品メーカーがこぞって山スカートを市場に投入している。

これらの企業の中でも、最も早く市場化を行ったのは、モンベルである。同社はすでに4年前(06年)からアウトドア用キルティング地の山スカートを販売していた。以前から、自転車で世界一周に取り組んでいるシール・エミコという女性を支援していたのだが、彼女の「自転車を降りた後でも電車に乗れるようなスカートがあったらいいのに」という要望がきっかけだったという。05年のことである。

彼女のようなプロ級の人が自転車に乗る場合、タイツのようなレーシングパンツをはくのが一般的だ。とりわけ長時間自転車に乗る際には、冬用のパットをあてたレーシングパンツが不可欠になる。だがこれは、自転車を降りた後に、お尻のところにサドルの痕が残ってしまいカッコが悪い。

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