嫌われるつぶやき、企業イメージを上げるつぶやきの違いはどこにあるのだろうか。話題の新メディアを効果的に使いこなすためには、ツイッター特有のルールやマナーを心得ておくことが大切だ。

恐るべき伝播力を誇る新メディア

情報発信の手段がマスコミからブログへ、ブログからTwitter(ツイッター)へ移り始めている象徴的な出来事が、昨年発覚した芸能人やプロ野球選手の不倫騒動だった。ツイート(つぶやき)に込められた当事者自身が発信した情報が、フォロワーと呼ばれるファンに直接届き、それを見たマスコミが取材に動き出した。当事者にマスコミが取材してファンに情報を提供する旧来のパターンや、当事者がブログに記事を書いてファンもマスコミも同時に閲覧するブログのパターンとも異なる。

もしかしたら当事者自身、ツイッターにこれほどの伝播力があるとは思っていなかったのかもしれない。最大140文字しか書けないツイートには内輪話的な「非公式」な印象があるし、登場当初は限られた仲間同士のおしゃべりの場であった。

しかし、もはやツイッターは「非公式」な場どころか、ファンに直接働きかけることのできる有力なメディアとしての力を備えている。最近では企業がツイッターを利用して情報発信するケースが増えているが、その場合の落とし穴も実はここにある。

ある飲料品メーカーが、自社商品に関連するキーワードが含まれたツイートを検索して、該当するユーザーに宣伝ツイートを送った。相手が自社のフォロワーに限られていればよかったのだが、無差別に検索したことからフォロワー以外のユーザーにも送ってしまい、ツイッターのマナーにもとる行為だと騒動になった。例え話に置き換えれば「プレジデント」編集部が、「プレジデント」とつぶやいたユーザーに宣伝ツイートを送り、プレジデント誌のフォロワーではない無関係のユーザーを憤慨させたということである。

国内でツイッタービジネスを推進するデジタルガレージの佐々木智也氏は「一方通行で情報を通知してきたこれまでのマスメディアのやり方を踏襲した結果でしょう。ツイッターにはツイッターなりの文化、ルール、マナーがある。それを守れば問題はないのですが、今流行しているお手軽なメディアであると甘く見ると失敗する」と警告する。

企業がツイッターを使ううえでまず迷うことは、どの範囲までの情報を発信してもいいのかということだろう。つぶやきであっても企業のアカウントから発信されれば公式見解ということになるが、だからといっていちいち上司の許可を受けたり、法務部の指示を仰いでいてはツイッターの即時性や手軽性を活かせない。

「基本的には企業が公式に発表する情報は、従来通りホームページ上でニュースリリースとして公開したり、公式ブログにアップすべきでしょう。それ以外でリアルタイムに情報を提供したいとき、ユーザーの質問に対する回答などはツイッターを使う。要は使い分けをすべきだということです」

また、事前に社内でソーシャルメディア運用ポリシーをつくり、ツイッターに関わる社員なら誰でも、つぶやいてもいい情報の範囲を理解している状況をつくることも重要だ。

デジタルガレージでは全社員がツイッターアカウントを持っている。

「個人の付き合いのツイートのほか、営業先とのやり取りなんかもしてると思いますし、アポ取りはメールよりツイッターのほうが早いという状況が生まれているくらい、活発に使われています。ですがIR情報やインサイダーに抵触しそうな情報はツイッターでは出さないというルールを決めています」