担当者に求められるのはマナーと愛社精神

面白い例としては柔軟剤の「ファーファ」がある。製造元のニッサン石鹸はキャラクターであるクマのファーファに「あったかいミルクココアにマシュマロいれるんだよっ☆」などとつぶやかせているが、クマがPCを扱えるのかなどと無粋に怒るフォロワーは皆無で、むしろファーファ・ベアの世界を楽しんでいて、それが商品イメージの向上につながっている。

逆に危険なのは「最近ツイッターが流行ってるみたいだから、おまえがやっとけ。それでユーザーを増やしてくれよというような、いい加減な人選」(太田氏)。ツイッター担当者は、ネチケット(ネット上のマナー)をわきまえていることはもちろん、消費者のコメントに誠実に対応するサービス精神と愛社精神を備えた人物を選ぶべきだ。

ツイッターのような不特定多数の人々が参加する場では「炎上」によりイメージが傷つくことを危惧する企業もあるだろう。ソーシャルメディア運用ポリシーを徹底させれば大半は回避できるとしても、失言した場合は、やはり炎上してしまうのだろうか。

佐々木氏は、ツイッターはそもそも「炎上しづらい」という。その理由はネット掲示板とは違う仕組みにある。掲示板は一つの書き込みを複数の匿名ユーザーが閲覧している。しかも掲示板は“自分の庭”ではなく“他人の庭”である。だから失言には容赦ないし、野次馬気分のユーザーが一斉に参加して次々に燃料が投下されて炎が大きくなっていく。

一方、ツイッターは自分自身の意志でフォローした相手を、自分の専用の庭(マイページ)で閲覧し、書き込んだコメントも自分のタイムライン(複数のツイートが時系列に並ぶ記録)に並ぶので、自分のフォロワーに見られて恥ずかしい発言はしにくい。それに、すぐに発言が流れてしまうのでいつまでも引きずることがない。

だがしかし、(1)炎上しにくく荒れにくいが、流出した情報は止められない(2)情報発信者の人間性がそのままツイートに表れる(3)固い内容のつぶやきは広がらない(4)上から目線のつぶやきは嫌われることは肝に銘じておくべきである。

NHKのあるツイッター担当者が、絶滅したと思われていたクニマス(国鱒)を発見した「さかなクン」に「さん」を付けなかったことで、呼び捨ては失礼だという指摘を受けたことがあった(本人の事務所は「さん」は不要とコメントしている)。担当者はあわてて謝罪したが、さかなクン事件はあちこちのツイッターやブログで取り上げられてマスコミ沙汰にもなった。ところが実は本気で怒ったフォロワーはほとんどおらず、担当者がからかわれただけというのが真相のようだ。

このようなドタバタ劇はこれからも起こるだろうが、だからといって失敗を恐れていては、企業は顧客においていかれるばかりである。