ブランドをメガブランド化し経営の柱とする

従来は、メーカーがほかとの優位性を発揮するうえで、チャネルが核心的地位にあった。みずから組織したチャネルは、いったん確立してしまえば、ほかのメーカーの追随を許すことはなかった。しかし、現在では、流通業において寡占化が進む。そうなると、これまでのようにメーカー主導のチャネル制御は難しい。チャネルを通じての競争優位の確立が困難になれば、それ以外のところに求めなければならない。その候補は、商品ブランドしかない。

チャネルが消費者とのメーカー固有の関係をつくるための媒体として重要さを失うにつれ、「ブランドを通じての対消費者関係」の構築維持が課題となる。しかも、それも、これまでのように、コーポレート・ブランド中心というわけにはいかない。というのは、「チャネルがあってこそのコーポレート・ブランド」なので、自前のチャネルをもち、自在に取扱商品をコントロールできて初めて、コーポレート・ブランドがそれとして十全な機能を発揮できたからだ。昔のように自身がチャネルリーダーではない状況では、いくら企業が会社名(=コーポレート・ブランド)を軸として自社の多くの商品にブランドを拡張しようと思っても、それは難しい。

焦点は、商品ブランドになる。しかも、独立したブランドを多数保有して、それを個々にマネジメントするのは難しいとすれば、少数のブランドに集中する必要がある。たとえば、P&Gでは、パンパースやジレットなどの20を超える一ビリオンダラー(1000億円)ブランドが企業を支えているといわれている。ブランドをメガブランド化し、それらを経営の柱とするやり方である。

こうした狙いは、P&Gだけでなく、コカ・コーラやネスレなどの外資系企業ではおなじみのやり方である。日本企業でも、ソニーやホンダ、あるいは最近ではシャープや日清食品はそうした志向をもっているように見える。他方、これまで各業界をリードしてきたトップ企業は、そのやり方への切り替えを急いでいる。経済回復後の新しい市場において、競争の様態は違ったものになりそうだ。

(平良 徹=図版作成)