クレームのはがきは事業改善のヒントが詰まったファンレター

お客様からの「クレームは財産」である

店舗数が80店前後になり経営が軌道に乗りつつある頃、私は全店舗にアンケートはがきを設置した。ココイチを利用したお客様の声に、耳を傾けてみようと考えたのだ。

そこで本社宛ての専用はがきを店のカウンターやテーブル席に用意し、投函してもらうようにすると、多い時で月間3万通もの声が寄せられた。毎月多額の郵便料金がかかったが、書かれている内容はすべてありがたい言葉ばかりだった。

多くのメール
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私や本部のスーパーバイザーが毎日すべての店舗を巡回指導できるわけではない。その一部を、アンケートはがきが担ってくれたのだ。

私はスタート時から会長職を引退する2002年5月末まで、丸15年間にわたり、毎日3時間半の時間を費やし、すべてのはがきに真っ先に目を通した。嬉しいことに「よかった」という声が圧倒的だったが、「がっかりした」「二度と利用しない」といったコメントもあった。私はそこに価値を見出した。元々それが目的で始めたのだ。私はクレームの文面をコピーし、そこにコメントを添え、該当する営業所や店舗にファクスで知らせて善処を求めた。

クレームのはがきは経営上の欠点を修正するヒントを与えてくれる貴重な財産である。言葉を換えれば、わが社への期待が書かれたファンレターだと言っていいと思うのである。

会社全体に好影響を与えた「早朝の掃除ボランティア」

早起きと掃除で「健全な企業風土」を育てる

アンケートはがきの導入を決めた頃、それと併せてもうひとつ始めたのが掃除のボランティアだった。毎朝6時に20~30人の有志が集まり、本社周辺を中心に30分以上の清掃活動を行う。道路を掃き清めるほか、高速道路下のごみを拾いに行ったり、用水路の底にたまっているヘドロをすくい上げたり、私が先頭に立って真面目に取り組んだ。

会社の発展や利益とは関係なく、早朝から懸命に奉仕作業をする若い社員たちの姿はどれも美しかったし、すごいと思った。私自身のパワーの源泉にもなった。

本社周辺にはカレーの製造工場と商品の配送センターがあるため、トラックが始終出入りしている。周辺住民からクレームが来てもおかしくないところだが、この清掃作業をはじめ挨拶運動や花いっぱい運動をやっていたせいか、地元からのクレームは皆無だった。

掃除の後、社食で朝食をとり、新聞を読んだり洗車をしながら1日のスケジュールを考えて始業時間を待っている社員と、時間ギリギリに出社してくる社員の差は歴然としていた。新入社員やほうきを持ったことのない男性社員は大いに刺激を受けたようだった。

この清掃活動を通して、多くの社員に早起きの習慣が身につき、健全な企業風土が育まれていった。それが、社業の発展に好影響を与えたことは言うまでもない。