マンション価格下落のトレンドはあと2~3年は続くとみられる。短期的には需給バランスの変化で相場が反転することもある。いま買いたいと思っている人は反転する前に、この下げトレンドのどこかで買うのが適当だろう。

価格交渉の際には、営業担当者を味方につけることが重要だ。購入を真剣に検討しているという姿勢を見せたい。たとえば自分の収入に対して住居費はここまでしか出せない、だからこの金額で――、と値下げの材料を出すと担当者も社内稟議を通しやすい。

物件価格を考えるうえで最も重要なのが「利回り」だ。土地価格に対して、家賃相場は硬直性が高い。賃貸に出したときの年間家賃収入が物件価格の何%にあたるかを調べると、その価格を客観的に評価できる。たとえば00年代初頭の新築マンションの利回りは4.5%以上だったが、価格の高騰で3%程度まで落ち込んだ。いま4.5%以上の物件はなかなか見つからないが、あるとすれば高騰前の水準まで戻しているので妥当な価格の物件だといえる。逆に2%以下の物件であれば5割引きを要求してもいい。見るべきは値引き額ではなく利回りだ。

長期的には不動産はもっと安くなる。06年に住宅分野の憲法ともいうべき「住生活基本法」が施行された。この法律は、これまでの新築・持ち家一辺倒の住宅政策を転換するものだ。今後は賃貸住宅の市場が整備され、「一生賃貸」でも快適に暮らしやすくなる。また現在は築20年の木造住宅は資産価値がゼロと評価されるが、「長期優良住宅」の制度などで中古住宅の価値を高く評価する税制や基準に変わりつつある。10年後、都心から電車で1時間程度の郊外では物件価格が3分の2程度まで下がっても不思議ではない。不動産は相場の見通しだけで選ぶものではないが、いま買う理由がない人が慌てて買う必要はないだろう。

(構成=斉藤栄一郎)