よく使われる「MMTは端的な事実」という言い回しの意味

「MMTは端的な事実」というのも、よく使われる言い回しだ。確かに、MMTは主流派経済学者が見過ごしがちな重要な事実を幾つも指摘し強調している。

だが、MMTはそれだけでなく、「仮説」や「提言」も含んでいる。MMTを構成する様々な学説・モデル・主張などを、私の独断でこれら3つに振り分けると以下のようになる。

(1)事実
●財政・金融政策のオペレーションに関する説明
●信用貨幣論
●ストック・フロー一貫モデル(SFCモデル)
(2)仮説
●租税貨幣論
●内生的貨幣供給理論
(3)提言
●ゼロ金利固定
●明示的財政ファイナンス(OMF)
●就業保証プログラム(JGP)

各項目の説明については割愛させていただく。詳しく知りたい方は、拙著『MMT:現代貨幣理論とは何か』ないし、望月慎『最新MMT[現代貨幣理論]がよくわかる本』(秀和システム)を参照して欲しい。

「事実」と言っても、私が事実と見なしているだけであり、議論の余地なしというわけではない。「仮説」は、これから実証的な分析などによって正しいか否かが明らかにされなければならない。「提言」は政策提言であり、その効果に関する検討が必要とされる。

「コロナ増税」なら失われた30年は40年に延長される

私自身、これらMMTの「仮説」や「提言」のいくつかについては、違和感や疑問を抱いており、MMTに全面的に賛成という立場にはない。

大事なのは、MMTと主流派経済学のいずれが正しいかといったように勝ち負けを決めることではなく、一つ一つの学説・モデル・主張の妥当性を丁寧に吟味することだろう。

私は、経済学者やMMTに興味を持つみなさんに、繰り返しそのように呼び掛けているのだが、残念ながら今のところさしたる賛同を得られていない。

コロナ危機後の増税によって、失われた30年は40年に延長される可能性が高い。それによって、庶民の暮らしはますます厳しいものとなり、我が国の衰退は加速するものと思われる。

国の命運がかかっているのだから、本書のようなMMT関連の文献を参考にしつつも、経済学の学派にとらわれることなくフリースタイルで、財政赤字や貨幣経済の仕組みをめぐる議論に参画する経済学者、政治家、そして国民が増えて欲しいと切に私は願っている。

※1 ケルトン氏のツイートの訳は、長谷川羽衣子(2020)「220兆円の政府支出の『財源』をめぐる、ステファニー・ケルトン教授のツイッター・スレッド」NGO e‐みらい構想で見ることができる。
※2 藤井聡(2020)「MMT(現代貨幣理論)で『コロナ増税』を絶対回避せよ! ~『政府は貨幣の供給者』である以上、増税も支出カットも不要である~」「新」経世済民新聞
※3 中野剛志(2020)「新型コロナウイルスで、MMT批判も自粛ですか?」BEST T!MES
※4 藤巻健史(2020)「『日本政府はもっと借金しろ』そんなMMT論者のツケはだれが払うのかPRESIDENT Online
※5 Mitchell, Bill(2019)Japan Finance Minister getting paranoid about MMT-Modern Monetary Theory

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