都内ブランド病院の勤務医も苦しむコロナ大減収

収入減は、公立病院<民間病院<大学病院<フリーランス

雑誌『日経メディカル』(2020年6月号)が医師3992人にアンケート調査したところ、コロナ禍で減収になった医師は、公立病院勤務医では約3割(減収した額の最頻値:月額1万~5万円、以下同)、民間病院医師で約3割(10万~20万)、大学病院医師で約5割、そしてフリーランス医師では約7割(20万~30万円)に上った。

中でも、大学病院の医師たちは本勤務先からは「PCR検査」などの新たな仕事を増やされ、アルバイト先からは「県を超える移動の自粛要請」をされたことで、裏フリーとして思うように稼げなくなった。とりわけ医学博士号や専門医資格などを修得しようとしている医師は、そうした大学病院の方針を守るしかないため、大幅な減収に追い込まれた。

アンケートに協力したある公立病院医師は、「大幅な減収はなかったが、感染対策で多忙になった。それでも、暇な高齢ドクターより安月給なので転職活動を始めた」と待遇に不満を漏らしていた。

腕を組む男性医師
写真=iStock.com/taa22
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「7割減」の本フリーは最もシビアな状況であるにもかかわらず、同誌のアンケートには「時間ができた分、生活を楽しむようにしている」「リスクを分散させ、職場の構成を変化させていくつもり」などとポジティブなコメントをしていた。

フリーランス医師は、組織に所属した定収のある生活よりも、自分自身で仕事内容や勤務地・勤務時間を決める働き方を選んでいる。それだけの覚悟があるだけに減収に対する不満は勤務医よりも少ないのかもしれない。

アフターコロナのフリーランス医師

6月から一般外来の患者数や手術件数は増加に転じているが、9月末現在では前年度の水準には達していない。フリーター医師向けのロースキル案件は件数も単価も下がったままで、このまま固定化しそうな雰囲気である。

大学病院や都内有名病院の勤務医がやっていた裏フリーのアルバイトも、「コロナ第2波」「院内クラスター発生」を恐れた管理職が禁止するケースが目立ち、若手医師に人気だった「都会の有名病院に就職してアルバイトで稼ぐ」というキャリアパスにも陰りが見える。同じく人気だった眼科、耳鼻科、皮膚科の開業医も、患者の受診控えが続いて苦しそうだ。

疲労した医師が机でうつぶせになっている
写真=iStock.com/sunabesyou
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一方、「人工透析」や「帝王切開」など治療の必要性が高い分野で、確かなスキルやコミュニケーション能力を持つ医師の需要は依然として高い。今後、病院の経営破綻/再生が起きた場合、医師の選別が行われる。その結果、年功序列の固定給から、売上連動制の変動給に変わるケースが出てきそうだ。

このコロナ禍を生き残れるのは、ビジネスパーソンであれ、医師であれ、大門未知子のように「高度で確かなスキル」を持つ者だけなのかもしれない。

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