「市職員の給与は、市内の大手企業に比べて3割、一般企業で5割以上は高い。だがこれは職員の責任ではなく、行政の仕組みに起因する問題。行政の仕事にはルーティン作業が少なくない。そうした仕事は臨時職員への置き換えを進める。さらに直接雇用よりも、民間に包括委託したほうがコストは安く、給与も適正になります。外部化を進めれば、総人件費で2割、7億円はさらに削減できる」

この「中川プラン」では、正職員を現在の半分以下の150人、臨時職員を「民間職員」として435人にすると試算している。市では来秋以降に委託を始める計画だ。すでに派遣会社など50社以上から打診があったという。

正職員では成果主義の導入を進める。08年のボーナスから部長クラスで年間最大90万円、課長クラスで60万円の収入格差がつくようになった。また37歳の係長や46歳の課長など、従来より若い役職者が出てきているという。社会人採用にも力を入れていて、これまでに15人を採用。元ホテルマンなど多彩な前職の人間が在籍するようになった。

09年12月には市立加西病院に対する地方公営企業法の全部適用を実施。人事や予算作成の権限を市長から病院管理者へ移し、経営の効率化を図る。09年度決算の純損失は、前年比で約1億円少ない約2億円だった。中川市長は、組織改編の結果として、「前例踏襲を変えようという姿勢が出てきている」という。

非正規の5割以上は時給900円未満
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非正規の5割以上は時給900円未満

職場の「非正規化」は、ほとんどの自治体で進んでいる。総務省の調査では、05~08年までの3年間で9.5%の伸びを示す。自治労は全自治体の総数で約60万人と推計。とくに市町村で増大が顕著だ。指定都市を除く市町村では、約1割の管理職を除き、正規職員と非正規職員の比率は2対1となっている。

非正規職員の労働条件は厳しい。自治労の調査によると、賃金の支給形態は時給型と月給型が2対1。このうち時給型では55.1%が時給900円未満、月給型では58.7%が月収16万円未満。さらに通勤費が支給されているのは47.2%と半数以下だった。年収200万円以下の「ワーキングプア」を、行政が自らつくり出していることになる。

もちろん家事や育児で、フルタイム勤務を望まない人もいる。非正規職員の80%は女性だ。ただ、全体の半数程度はほぼフルタイム。「非正規化」による人件費の縮減には限界がみえる。

※すべて雑誌掲載当時

(石井伸明(名古屋)、プレジデント編集部(加西、小野)=撮影)