トヨタ自動車の「トヨタ生産方式」は、「カイゼン」という言葉で世界中に知られている。だが、そのシステムは「労働強化と人員削減という人間を無視したやり方」と一部から非難されてきた。ノンフィクション作家の野地秩嘉氏は「そうした誤解が広まった理由を考えると、トヨタの強みがわかる」という――。

※本稿は、『トヨタに学ぶ カイゼンのヒント71』(新潮新書)の一部を再編集したものです。

愛知県豊田市にあるトヨタ自動車の工場
写真=EPA/時事通信フォト
愛知県豊田市にあるトヨタ自動車の工場

「トヨタ生産方式」ってなんだ?

トヨタ生産方式とはトヨタの創業者、豊田喜一郎が考え、後に大野耐一が体系化した工場における生産方式をいう。

「工場に生産方式なんてあるの? サプライヤー(協力会社)から部品を仕入れて、ベルトコンベアに流して組み立てれば、それでいいんじゃないの?」

わたしはそう思い込んでいた。おそらく今でも多くの一般の人はそれくらいの考えではないのか。

ところがそうではない。それぞれの工場には、それぞれの生産方式というものが存在する。そして、生産方式によって生産の効率はまったく違うのである。

実際に自動車工場に見学に行ってみると、メーカーによってラインの風景も作業のやり方もまったく異なっていることがわかる。

今では少なくなったけれど、いわゆる大量生産方式というものがかつては主流だった。生産計画を立てて、部品を仕入れたら、どんどん作ってしまう。これを「押し込み生産」とも言う。部品を押し込んで、製品を作るからだ。そして、この場合、計画通りに製品が売れていけば問題はない。製品はマーケットに出て行って消費者が受け取り、工場内外に滞留することはない。

しかし、どんなに綿密に立てても、計画というものは必ず狂う。「1万個売れる」と計画を立てて、余分も含めて1万200個分の部品を仕入れて、そして、実際に売ってみたら、9500個しか売れなかった、なんてことはよくある。