T細胞やB細胞は簡単に影響を受けませんが、NK細胞はちょっとしたストレスで弱くなります。先日、新型コロナウイルス感染者がクルーズ船内での生活を強いられました。狭いところへ閉じ込められて、さらに不安なまま生活を送る。あれこそまさに免疫力が下がる環境です。

そして不安のような負の感情は伝染します。母親のラットから子どものラットを離す実験を行ったところ、母親のNK活性は大幅に低下しました。さらに母親ラットの隣に元気のいいラットを置くと、そのラットのNK活性まで下がったといいます。

ストレスとNK細胞の関係/ストレスをためやすい10のタイプ

ストレスを克服する最良の手段とは

どうやってストレスを克服すればいいのでしょうか。まず一番簡単な方法は、笑うことです。漫才や落語を生で見てもらい、その前と後でNK活性の変化を調べたところ、18人中14人の活性が上昇したという報告があります。

あまり笑えないという人は、作り笑いでもOK。顔の筋肉が緩むことで、脳が「笑っている」と判断する。
あまり笑えないという人は、作り笑いでもOK。顔の筋肉が緩むことで、脳が「笑っている」と判断する。(PIXTA=写真)

笑っているとき、人間は悩みを忘れて、難しいことを考えません。いわば頭が真っ白の状態になり、精神がリセットされます。なぜ笑うと免疫力が上がるのかはまだ解明されていませんが、リラックスした結果、副交感神経が優位になることで、リンパ球が活性化されているのかもしれません。また、鎮静効果や気分の高揚が得られるβエンドルフィン、精神を安定させるセロトニンなどの脳内ホルモンが笑うことで分泌され、ストレスによって生じるホルモンを抑制するという理由も考えられます。

「楽しいことを考える」という手段も有効です。イギリスの医学雑誌ではこのような調査報告があります。乳がんの患者を告知後の心理状態で以下の4グループに分け、病気の経過を追跡しました。「病気には負けない」と積極的に立ち向かったAのグループ、病気であることを忘れようとするBのグループ、病気のことばかり深刻に考えているCのグループ、ダメだとあきらめて絶望的になったDのグループ。10年後、もっとも生存率が高かったのはAの70%でした。対してDの生存率は20%。前向きな精神が免疫力を強化した、とも考えられます。

「気にしすぎない」ことも重要です。新型コロナウイルスの影響もあって、清潔に対する意識が高くなりました。これ自体は非常によいことですが、神経質になりすぎると逆効果になる場合もあります。

過剰に清潔すぎる環境で暮らしていると、細菌やウイルスが入ってこなくなります。すると「警察官」であるNK細胞が働かなくなり、活性が低下。結果、それに応じた免疫力しかつかなくなります。手洗いやうがいは習慣化しつつ、忘れたとしてもパニックにならず、「免疫を鍛えるトレーニング」程度に受け止めるといいでしょう。

極端な話、風邪を引いたぐらいで、病院に行かなくてもいいのです。病院には元気のない人が集まっています。前出のラット実験ではありませんが、暗い人の近くにいると暗い気分が伝染してしまいます。