資金調達の手段として循環取引を行う企業も!

2008年2月、循環取引を繰り返し約1500万円を会社からだまし取った容疑で、NECエンジニアリングの元事業部長代理が逮捕された事件は記憶に新しい。2009年にも広島ガス子会社の循環取引が発覚するなど、同様の事件が頻発している。

図1:架空の商品を転売する「循環取引」のカラクリ
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図1:架空の商品を転売する「循環取引」のカラクリ

循環取引とは、図1のように実際には取引が存在しないのに、仕入れ先や販売先の企業などと結託して商品が流通しているように装う架空取引の一つ。

なぜ、循環取引が後を絶たないのか。まず第一に、循環取引は形を変えた金融取引であるという点が挙げられる。例えばあなたの会社が資金不足に陥っているのに、銀行からの融資は受けられない状況にあるとしよう。取引先に架空の商品を売り、代金を回収する形をとれば、その架空取引で手っ取り早い“融資”を得られる。

第二に、協力する取引先にとっても、売り上げを計上できるという“利点”がある。苛酷なノルマを課された担当者が、目標達成のため、つい悪魔の囁きに乗ってしまう。ノルマの未達が、自分の給料やボーナスの査定に大きな影響を与えるからだ。

さらに、第三のポイントとして、首謀企業の担当者から協力企業の担当者へ礼金が払われる可能性が推測できる。それがインセンティブとなり、“ウィン・ウィン”の循環の輪ができるのだ。

図2:循環取引を行うと、こんな罪に問われる!
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図2:循環取引を行うと、こんな罪に問われる!

こうした循環取引は互助組合的な意識で行われている場合が多く、当事者に罪の意識が希薄であるケースも存在する。関与している企業すべてがメリットを享受できる仕組みになっているため、事件が発覚するまでに時間がかかってしまうことも珍しくない。一つの企業が支払い不能に陥ったり、内部通報が行われて初めて、事件が発覚する場合が多いのだ。

事件を起こした企業が上場していれば、金融商品取引法違反(197条・有価証券報告書等の虚偽記載)などにより、経営者が刑事罰を問われる可能性がある。また、経営者が株主から損害賠償を請求されることも考えられるだろう(会社法847条・株主代表訴訟)。さらに、金融庁から課徴金の支払いを命じられることもある。

事件に関与した担当者は、社内規定により懲戒解雇となることは確実だ。そのうえで背任罪(刑法247条)や場合によっては詐欺罪(刑法246条)などで会社側から刑事告発される可能性が高い。会社に損害を与えたとして、民事でも損害賠償(民法709条・不法行為)を請求される場合もある。

こうした犯罪の多くは、経営幹部など当該企業の中枢にいる人材が関わっていることが多い。それゆえ、不正が企業内において数年間も見逃されるケースもある。循環取引をなくすには、期末ごとに売掛金の取引内容をサンプリング調査するなど、内部監査体制を強化することが必要だろう。

※すべて雑誌掲載当時