アフリカ系米国人が警察に拘束され死亡した事件を受け、世界中で人種差別に対する抗議デモが広がっている。これまでも繰り返されてきたデモとは何が違うのか。取材したNY在住ジャーナリストのシェリーめぐみ氏は「影響力のある芸能人も含め、若い白人たちが生まれもった特権をようやく自覚し始めたことが大きい」という――。
写真=筆者撮影
6月4日、ニューヨーク・ハーレム地区での抗議運動の様子

暴動は静まり、平和的なデモが増えている

「私の白人の友達は隣に黒人のボーイフレンドを乗せて運転していた。すると後ろからパトカーが追いかけてきて『スピード違反』だという。警官はマリファナの匂いがすると言って、助手席にいたボーイフレンドに職務質問と、身体検査を始めた。彼女は何も聞かれなかった。なぜなら彼女は白人だったから。こんなことが許されていいはずはない」

ニューヨーク・ハーレム地区の抗議運動で出会った21歳の白人女性エミリーさんの声は怒りで震えていた。

ミネソタ州ミネアポリスで白人警官に膝で首を押さえつけられ亡くなった黒人ジョージ・フロイドの事件はアメリカ人に衝撃を与え、全米、そして全世界で黒人に対する警官の暴力と人種差別に反対する大規模な抗議運動に発展、当初は一部で警官との衝突や略奪などもあったが現在は鎮静し、平和的なデモはむしろその動員を増やして続いている。

ニューヨーク市内でも連日多くの場所で抗議運動がある。筆者が住む歴史的な黒人コミュニティー、ハーレム125丁目のニューヨーク州庁舎前広場では4日、集まった20~30代の若者のうち半分が白人だった。

過去50年間で類を見ない規模に

冒頭のエミリーさんはこれまでこうした抗議運動に参加した経験は一度もない。迷った末ソーシャルメディアで見つけたこのデモに参加したのだ。

アメリカでの黒人への暴力は今に始まった事ではない。それが今回これほどまでに大きな抗議運動に発展したのは、過去50年間で初めてだということを否定するアメリカ人はいないだろう。

これまでと何が違うのだろうか。そして、この活動はどこに向かっているのだろうか?

ニューヨーク生活30年目を迎え、ミレニアル・Z世代を追いかけてきた筆者は、20年間ハーレムという歴史的なブラックコミュニティーに住んでいる。同時に黒人の夫を持ち、自らも日本からの移民である。たった今起こっている事を、過去からの時間軸もたどりながら、ニューヨークで実際に抗議運動に参加している人々の声を中心にお伝えしたい。