元側近を口封じのために都関連会社の社長に天下り

しかし、都知事という職はハッカー的な発想では務まらない。一議員であれば脆弱性を指摘することで既得権や体制と戦う姿勢を見せ、政治生命を永らえることもあるかもしれないが、都知事は都政という既存のシステムを守る側。行政とは、ひたすら保守・点検業務の繰り返しだ。一部システムを刷新、新設することはあり得るし、今回の新型コロナのような突発的事態への対応も求められるが、その際も動き続けている既存のシステムとの整合性・互換性が重要視される。

まったく新しい政治を、というのであればOSそのものから開発する必要がある。新しい概念に基づく都知事自身のビジョンやプリンシプルなくして、正常に機能するOSを新規に構築することは難しい。

だが、そもそも小池氏が「新しい政治」を志向していたのかさえ疑わしい。市場問題をめぐって古い都政を「頭の黒いネズミ」などと揶揄やゆしたにもかかわらず、自身は元側近を口封じのために都関連会社の社長に天下りさせるという、当のネズミもびっくりのことを平気でやってのけるなど、小池氏の手法は露骨に「古い政治」を体現している。

防衛行政「ちんぷんかんぷん」の防衛相

過去に小池氏は防衛大臣という組織のトップの座に就いたことがあるが、「前大臣が責任を取らなかったイージス艦問題の責任を取る」と宣言して、就任後わずか55日で辞任に至った。防衛関係者OBは「女性初、という冠が欲しかっただけで、実際にその座についてみたら防衛行政はちんぷんかんぷん。国防の何たるかもわからなかったのだろう。外遊で派手に立ちまわって、その後はすぐに乗り捨てた。『アイシャルリターン』と言い残した去り際の演出はいかにも小池らしいが」と辛辣しんらつだった。

もちろん、小池氏がそのハッカー的素質を保守・点検業務に生かす道もあっただろう。行政というシステムを脅かす脆弱性をコツコツと、多くの場合はボトムアップ型で、しかし敵よりも早く見つけ、どうパッチを当て、システムのよりよい運営につなげるかを考え実行する。

ハッカーもその能力を善意で使えばホワイトハッカーになる。選挙や権力闘争で相手の脆弱性を突く、あるいはそこを見抜いてのメディア戦略の上手さは、小池氏の突出した能力のたまものだ。だが息長く地道に運営されるべき行政とは相性が悪い。そして何より、メディアも有権者も興味を持たない。そうしたことに小池氏も興味がない――となれば、都政でめぼしい実績が上がらない状況は、小池氏と都民とメディアの合作である、ともいえる。