特定の人物を持ち上げるテレビ局のスタンスはいかがなものか

自民党ベテラン議員の1人も「特定の人物をヒーロー扱いして、その背後にある政党の支持率アップに貢献している。テレビ局はこうしたことを認識しているのか。放送法の『政治的公平性』の観点からもどうなのかねえ」と神経をとがらせる。放送法を持ち出すのは自民党が焦りを感じている証左といえ、かつては高市早苗総務相が放送局に電波停止を命じる可能性に言及し、2014年には自民党の萩生田光一筆頭副幹事長(現文部科学相)が在京テレビ各局に「公平中立と公正」を求める文書を送ったこともある。それだけ「維新の戦略とペースにはまってしまっている」(自民党衆院議員の公設秘書)というわけだ。

維新創業者の橋下氏や松井氏と比べて「キャラ立ちしていない」ともいわれた吉村氏だが、大阪市在住の40代主婦は「今の維新はかつての荒々しい感じがなくなり、ソフトになった」と、「吉村世代」に好感を抱く。15年5月に僅差で否決された「大阪都構想」をめぐる住民投票では「悪顔の松井氏やケンカのイメージが強い橋下氏への嫌悪感がマイナスだった」との指摘もあるが、今年11月に予定される5年ぶりの住民投票は「公明党と組めている限り、ダメな理由がない」(維新支持者の大阪市の男性会社員)。大阪では、東京都で小池知事に反発する自民党東京都連という構図と同様に「府知事VS自民党大阪府連」の対立が続いているが、今度の住民投票は「吉村氏のソフトな印象が加わり、浮動票も取り込める」(前出の主婦)状態だ。世代交代を唱える松井氏の「ソフト戦略」も奏功し、今のところはじける気配が見えない「吉村バブル」到来で「このまま都構想もいってまえ」と維新支持者の鼻息は荒い。

コロナ対応で安倍政権と距離を置きはじめた自民党閣僚関係者は、ため息交じりにこう嘆いた。「自民党が本気で潰しにいかなければならない相手は立憲民主党ではなく、今や維新だ。大阪で踏ん張る自民党府連のことを考えた時、維新に甘い顔をしてきた菅官房長官はどう責任を取るつもりなのか。安倍政権の支持率は下降し、次期衆院選は『このままでは戦えない』となるだろう」

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