最初に「それは違うんじゃないか」と思っても、まずはぐっと自分の意見をのみ込んで、相手の話に耳を傾けることが大切だ。よくよく話を聞いてみると相手の意見にも共感できるポイントがあったり、自分の勘違いや思い込みにハッと気づけることもある。

大島さんがオススメする会話のポイントは、「肯定から入って会話を続けるクセをつけること」。相手の意見を頭ごなしに否定せず、肯定しながら話を進めるスキルを身につけることが必要なのだという。

「相手の話に対して否定から入る、というのは簡単な会話法ですが、それが本当の意味でのコミュニケーションといえるかどうかは疑問です。『うん、確かにそうだよね』と肯定すると、今度は自分から会話を広げていく工夫が必要になる。最初は難しいかもしれませんが、肯定ベースでの会話を身につけると相手からの信頼を得ることができます」

片手にピストル心に花束

職場でのコミュニケーションにおいて注意するべきポイントは、発言の内容だけではない。自分と相手の力関係や立場の違いを客観的に見つめることも重要だ。

心に花束
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たとえば無茶な仕事の依頼でも、コワモテな担当者が相手だから断りづらい……という経験がある人も多いはず。優しい口調で「書類にサインしてくださいよ」と言われても、強要されているように感じてしまうこともあるはずだ。

このようなケースは、男女の間や上司と部下の間でも起こりうること。「なにかを要求した側は、無理やり強制したつもりがなくとも、相手は強要されたと感じる」というパターンの性被害も、過去にいくつも生まれている。「彼女はにこやかに接してくれていた」というお決まりの言い訳も、加害者となった男性にとっては本当にそう感じていたケースも少なくない。だからこそしっかりと意思疎通を図り、合意形成をしていく必要がある。

大島さんは「われわれ男性は、女性に対して常にナイフ片手に話しかけているという意識を持つべきなんです」と語る。

「男性は女性よりも体格が大きく、力も強い。だから男性同士と同じようなコミュニケーションをしていると、女性にとっては恐怖に感じてしまうこともあります。『女性を特別扱いしなくちゃいけない』と言っているわけじゃなくて、少しの心遣いで立場の差異を埋めていくことが大事だと思うんです。

実際に自分がナイフを持っていると思ったら、刃先を自分に向けて持ったり、さやに収めたりして、細心の注意を払うじゃないですか。少し過剰に思えても、ナイフを持っている人がやらなきゃいけないことだと思うんです」