テクノロジーによって学習環境は変わる

「学習のパーソナライズ化」は、個々の生徒に適した方法で学習させるという意味だ。生徒を「個人」としてとらえた学習指導を行うことであり、20世紀の間しぶとく生き残っている“全員同じ”の学習方法とは違う。

ジョン・カウチ、ジェイソン・タウン『Appleのデジタル教育』(かんき出版)
ジョン・カウチ、ジェイソン・タウン『Appleのデジタル教育』(かんき出版)

誤解しないでもらいたいのだが、学習のパーソナライズ化は、生徒と教師が1対1でなければならないという意味ではない。また、生徒ごとに教科書やテストの内容を変えるという意味でも、生徒をひとりの状態にして学習させるべきだという意味でもない。子供を学校へやるより自宅学習のほうがいいという意味でもない。

子供によってはいまあげたような策が有効に働く場合もあるが、教育全体に適用するとなると、現実的な解決策ではない。

学習のパーソナライズ化は、学習と指導を成功に導く屋台骨となるものだ。教育のパラダイムシフトを起こすうえでこれ以上の解決策はないが、パーソナライズ化は孤立化と混同されやすいので注意が必要だ。

生徒が自分に関係があると感じる授業のほうが効果が高いのと同じで、カリキュラムもパーソナライズ化したほうが学習効果が高まる。自分との関連性を強く感じるほど、学習の負担が軽くなる。

学習成果の向上を目的とするなら、ある程度のパーソナライズ化を許容して生徒個人との関連性を高めるべきだが、そう簡単に学習のパーソナライズ化を効率よく大規模に進めることはできない。これが現時点で最大の障壁となっている。

ただし、そうした状況はテクノロジーによって変わろうとしている。何といっても、アダプティブラーニングを可能にするソフトウェアを通じて、小さめの規模で学習のパーソナライズ化を実現する方法が模索されている。また、さまざまなデジタル教材が教育の現場に取り入れられつつあり、これは今後さらに進んでいくことは間違いない。

学習のパーソナライズ化が実現するのは時間の問題だろう。

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