手が出てしまうのは教える側の勉強不足が原因

指導者には、指導者の思いもあり、事情もある。

「本当に選手のためを思って、暴力に訴える指導者もいるでしょう。確かに選手の態度や姿勢などに非がある場合もあるんだけど、手が出てしまうのは教える側の勉強不足が原因です。コミュニケーションスキルが低いケースが多い。朝から晩までずっと練習で、同じメンバーとだけ過ごすのも問題でしょうね。指導者はもちろん、仕事ではなくボランティアでやっていて、週末の休みを潰して、ずっと野球のことばかり考えている。『このチームのためにやっている』という思いが強いぶん、暴力が顔を出すことになるじゃないですか。そういう人を排除したら、指導する人がいなくなるかもしれない」

その労に報いるために、保護者は弁当を用意し、お茶を出す。下へ置かない扱いをされるうちに、勘違いする監督やコーチも出てくる。そこに、暴力を生み、許容する土壌ができる。

菅原が経営する玉子屋は、現在1日6万食以上の昼食弁当を都心の企業に届けている。年商は90億円。2008年にはサービス産業生産性協議会が主催する「ハイ・サービス日本300選」第2回受賞企業に選出され、さらに2015年から現在まで、「世界経済フォーラム(通称「ダボス会議」)」のフォーラムメンバーとして、会議に参加している。

そんな経営者として、菅原は野球人の未来を憂いている。

「監督の指示は絶対」だから自分で考えない

「学生時代に経験した暴力的なことがよかったか悪かったかといえば、よかったとは思わない。指導者に服従しなければチャンスをもらえない、反抗すれば出番を奪われるという野球界の体質が、その後に悪い影響を与えているような気がします。

うちの会社は弁当屋ですけど、ほかの国にオフィス向けの仕出し弁当というスタイルはないから、その分野ではうちが世界一とも言えます。この10年、経営者としてさまざまな業種の国内外のリーダーに会う機会がありましたが、ラグビー、アメフトの出身者が多くて、野球出身の人はあまりいない」

野球を巡る環境のせいではないかと菅原は言う。

「ラグビーやアメフトの人は、練習以外にもいろいろなことを経験していて、バイタリティがある。野球は練習時間が長くて、閉鎖的。どうしても視野が狭くなりがちです。監督の指示は絶対という世界にいるから、自分で考えることが少ない。だから、いまだに暴力が残っている。

いまの時代、誰かに従うだけではダメで、自分から何かを生み出さないと通用しない。僕は、野球出身の経営者がたくさん出ることを楽しみにしているし、社会で活躍する野球人がもっと増えてほしいと思っているんですけど……」

野球というスポーツの閉鎖性、風通しの悪さが、暴力を生む温床になっているのだろうか。

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