組替え、新しい組み合わせで強烈なアウトプットを生む技法

近年、日本でもビジネスにおけるデザインの重要性が言われるようになりましたが、誤解されている部分もあるのでここで少し付け加えておきます。この文脈でいうデザインとは例えば「ファッションデザイン」など、一般的に認識されている「見た目」や「スタイリング」を意味するものではありません。

常に斬新かつ人の心を惹く発想をするデザイナーたちは、何もまったくの0から新しいアイデアを創出しているわけではなく、むしろ既存のものを組替え、新しい組み合わせをつくることによって、強烈なアウトプットを生み出しています。

その組替えや再結合の技法のみを抽出し、ビジネスにも応用しようというのが、この文脈でいうデザインです。ですので、本書では芸術の話は一切出てきませんし、ここでいうデザインはあくまでビジネス上の限界を超えるための手段にすぎません。

先ほどのAirbnbの共同創業者の2人やダイソンの創業者なども、意識しているかは定かではありませんが、彼らの思考の原点にはこの「技法としてのデザイン」があり、それがビジネスのフィールドでも発揮されているのです。

ビジネスにこの「技法としてのデザイン」が重要だという流れは、世界的には先程も述べた2000年代から言われるようになり、同時期には、それまでは純粋なデザイナーを養成していたデザインスクールがビジネスパーソン向けのカリキュラムを展開する流れが生まれました。

センスは不要、枠にはまらない優れた発想は凡人でもできる

著書『感性思考』では、いま世界のビジネスエリートが殺到する米国・デザインスクールで叩き込まれる1年間のプログラムを一冊にまとめました。

もちろん、このプログラムは純粋なデザイナーになるための授業ではなく、テーマはあくまでビジネス、デザインはその限界を突破するための手段です。

このプログラムの特徴は、いわゆる「センス」は不要であるという点です。一般的に「正解」の枠に収まらない優れた発想は、一部の天才のひらめきによるものと思われがちです。

たしかにそのような天才は、感覚だけで大勢の心を惹きつける大胆な発想をします。しかも多くの場合、彼ら自身はなぜその発想ができたのか言語化することができない。なので、我々凡人にはどうにもできないように思いがちです。

しかし、そのような創造的なアウトプットが生まれる背景には一定の法則があり、方法論化することができます。それが「組替えという意味でのデザイン」です。

このようないわゆる「センス」があるといわれるような人の思考を、そうではない人でも実践できる「方法論」として落とし込んだのが、『感性思考』で紹介するデザインスクールの講義です。