【矯正歯科】疑問視されるセラミック。全体矯正なら1年以上

歯並びの矯正といえば子どものとき、友達が歯にワイヤーを巻きつけられ、その状態のまま1年くらい過ごしていた姿を思い出す人も多いだろう。大半が自由診療で、美容だけでなく、噛み合わせの改善、虫歯や歯周病の予防が目的というケースもある。

歯の矯正治療は時間がかかる。今枝さんは、「歯の位置や生える方向を変える場合、少しずつ歯を動かさないと、歯の神経が死んだりするからです」という。矯正する歯の数によっても治療期間は変わり、「歯並び全体の矯正なら、1~2年かかるケースもあります。部分的な歯の矯正でも、3~4カ月はかかるのが普通です」(今枝さん)。

さらに、矯正した歯の「保定」という治療を、同じくらいの期間受けなければならない。「歯が矯正する前の元の姿に戻ろうとするからです」(同)。具体的には、歯のリバウンドの動きを防止する「リテーナー」という医療器具を、睡眠中に歯にはめておく。歯の部分矯正だけでも、トータルで6~8カ月はかかるわけだ。アンケート調査でも、歯の矯正治療に1年以上かかったという人が7割近くに達した。

矯正歯科の治療期間/矯正歯科の治療の自己負担額/矯正歯科の治療に対する不満(複数回答可)

とはいえ歯の矯正治療にも、大きく様変わりした点がある。それは、ワイヤーによる矯正に代わって、「マウスピース」による矯正が主流になったこと。矯正用のマウスピースは、特殊な樹脂製で透明。「1日20時間以上、はめておかなければならないのですが、目立たないし、自分で自由に着脱できます。それに、ワイヤーのように食べかすが歯に残ることがなく、虫歯になりにくいのも利点なのです」(同)。1~2週間で交換する使い捨てなのだが、患者の歯の形に合わせたオーダーメードで、使う順番が決まっている。「マウスピースの形が少しずつ違っていて、交換するに従って、歯を矯正したい向きに徐々に変えていくのです」(同)。

アンケート調査では、約3分の2の人が治療費の高さに不満を示した。マウスピースによる矯正では、上の歯全部の場合、80万~100万円もかかる。もっとも、ワイヤーによる矯正に比べると、安上がりなのだそうだ。

ただし、ねじれて生えている歯を矯正したい場合など、ワイヤーによる矯正のほうが適したケースもある。マウスピースとワイヤーを併用して、歯を矯正する場合もあるという。

最近「セラミック」を使った歯の矯正も話題だ「矯正といっても、歯を削ってセラミックの被せ物をコーティングして、歯の形がよくなったように見せるものです。健康な歯を傷つけることになるので、短期間で美容効果を得たいケースを除いては、あまりおすすめできません」と今枝さんはいう。

今枝誠二
今枝誠二(いまえだ・せいじ)
目黒クリニック院長
東京医科歯科大学歯学部卒業。2009年、医療法人社団仁愛会歯科日吉クリニック院長。17年から目黒クリニック院長に。東京医科歯科大学臨床研修指導医、日本抗加齢医学専門医でもある。著書に『現役歯科医が警鐘 こんな歯医者に行ってはいけない』がある。
(撮影=加々美義人 アンケート集計=パイルアップ)
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