【部分入れ歯】最低5回/見た目重視なら最低10万円

虫歯や歯周病だけでなく、交通事故などのケガで歯を失うと、食べ物が噛めなくなって、消化が悪くなるといった健康上の害も生じやすい。そこで失った歯の代用となる「義歯」がある。「入れ歯」はその代表格。今枝さんによれば、保険診療でも自由診療でも、治療回数は基本的には同じだという。

「入れ歯をはめる部分の型を取ってシリコンで模型を作り、ほかの歯との噛み合わせを調べたりするのに、最低でも5回かかります。それに入れ歯は、柔らかい歯茎にのせるので、実際に使ってみると歯茎に沈み込んで、型の通りにはまずフィットしません。口内に当たったり、話がしづらいといった不具合も起こりやすく、試用後に入れ歯を削って形を整えるといった調整が必要なので、治療に時間がかかるのです」

アンケート調査でも、部分入れ歯の治療回数が5回以上という人が、約半数を占めた。入れ歯の代金は「総入れ歯なのか部分入れ歯なのか」「部分入れ歯なら何本なのか」といった具合に、基本的に本数で決まる。たとえば保険診療では、局部床義歯(部分入れ歯)に「1~4歯」「5~8歯」「9~11歯」といった診療報酬上の区分がある。「部分入れ歯では、2000~5000円(自己負担が3割の場合)のケースが多いですね」(今枝さん)。アンケート調査でも部分入れ歯の治療費は、2万円未満が過半数を占めている。

部分入れ歯の治療回数/部分入れ歯の治療の自己負担額/部分入れ歯の治療に対する不満(複数回答可)

一方で自由診療の場合、部分入れ歯でも10万~25万円の代金がかかるという。ただし、保険診療にはない利点もあると、今枝さんは指摘する。

「保険の利く入れ歯は、歯と歯茎の部分がレジン(プラスチック)製で、落としたり、強く噛んだりすると、割れる可能性があります。また大きめに作るので、はめたときの違和感が強く、食べ物の温度を感じにくいといったデメリットもあります。それに前歯にかける留め具も金属製なので、一目で入れ歯とわかってしまいます。自由診療なら、丈夫な素材で入れ歯を小さめに作ることもできるし、留め具を歯茎と同じ色に仕上げることも可能です」

アンケート調査では、部分入れ歯に関して、治療後の不満を訴える人が6割もいる。まず、保険診療と自由診療の違いや、おのおののメリットとデメリットをきちんと説明してくれる歯科医かどうかを見極めたい。そして納得がいくのなら、自分に適した入れ歯を自由診療で作るのも手だろう。

しかし、もともと入れ歯は不安定で、「自分の歯に比べて、噛む力は3割ほど減る」(同)というネックがある。それゆえ、せんべいなどの硬い食べ物が食べづらくなり、インプラントという選択肢が浮上する。