中国の法運用を理解するための四つの要素

これまでにも中国の法律は、その文言通りの運用がなされていないことについて、しばしばその理屈付けが考察されてきました。中国の超法規的措置について過去に提唱されてきた理論としては、1.政策の法源性、2.敵・味方の理論、3.非ルール的法、4.非公開の法、などがあります。

1.政策の法源性 中国では政策にも法的効力があり、さらに政策が法律より優先されることが一般的です。

2.敵・味方の理論 中国では、「人民(=中国共産党の指導に従う者)」以外には一切の権利を認めない(=不当に拘束を受けない権利なども含む!)という構成が取られています。国民を「人民」と「人民の敵(人民でない者)」に分け、異なる対応をするこの手法を「敵・味方の理論」と呼びます。

3.非ルール的法 制定法があってもそれを根拠にした裁判は行わず、「法律効果」より「社会効果」を重視する裁判官自身の判断によって裁きが進み、その結果が後に立法者によっても追認されることによって制定法になるという「法」の発想です。これは「一つ一つの事案についてまともな人間が公平な立場に立って一生懸命考えれば、行き着く結論は大体同じものになるはずだ」、あるいは「当該問題についての『誰もが認める一つの正しさ』=『公論』というものが必ずあるはずだ」という考えが前提にあります。この非ルール的法は、清代中国法をモデルに構築された理論ですが、現在の中国にもこのような「法」が残存しているとの指摘があります。

4.非公開の法 中国では政策にも法的効力が認められることはすでに述べましたが、さらに「紅頭文件」と呼ばれる、外部には公開されない政策文書が存在していることも明らかになっており、これが「非公開の法」として機能しているという指摘があります。

冒頭で紹介した「新型コロナウイルスを故意に他人に感染させるような行為に対し、地方の高等裁判所が独断で、最高刑が死刑となるような独自の処罰基準を示す」ケースは、3.の「非ルール的法」の発露といえるかもしれません。一方で、最高人民検察院監察局長がライバルを法的根拠なく監禁した事件は、上の四つのどの原理を使っても正当化しえません。