ドイツのメルケル首相が支持率を上げている

新型コロナ感染が始まった当初、国内の感染者数にクルーズ船内の感染者数を合算してテレビ局が報じると、すぐさま役所からクレームが入った、という。ある幹部官僚が「NHKが言うことを聞かずに合算人数を報じている」と苦言を呈していたのを筆者も直接聞いた。2月末のことだ。政府は新型コロナの封じ込めに必死になっているのに、国内での感染実態をメディアが過度に強調して騒いでいると感じていたのだろう。今から思えば滑稽な話だ。

果たして、霞が関の幹部官僚たちは国民を見ながら仕事をしているのだろうか。役所の論理優先で仕事をしていないか。あるいは、自分たちにうるさく言ってくる政治家の顔色だけを見ているのではないか。

危機に直面して、政治家の資質が問われている。危機の時にリーダーシップが取れるかどうか、国民は冷静に見ている。今回の新型コロナ蔓延が、国民生活にどんな深刻な影響を与えるか、きちんと先が読めていれば、打ち手も大きく外れることはないはずだ。

新型コロナ蔓延以前には支持率が落ち込み、年内での退陣が決まっているドイツのアンゲラ・メルケル首相の支持率がここへきて急上昇しているという。メルケル首相は3月15日に5カ国との国境を事実上封鎖、18日には国民向けのテレビ演説を行い、「第2次世界大戦以来の試練だ」と強調、他者との接触を減らすよう国民に訴えた。

その後の新型コロナ感染者のドイツでの死亡率はイタリアやスペインに比べて大幅に小さい状態が続いている。メルケル首相のリーダーシップへの評価が高まっているのだという。

緊急経済対策は、まだ国会すら通過していない

米国ではドナルド・トランプ大統領が、「救済法案」と呼ぶ総額2兆2000億ドル(約230兆円)の経済対策法案を議会通過させ、3月27日には署名して成立させた。日本の安倍晋三内閣も4月7日に108兆円にのぼる緊急経済対策を閣議決定したが、国会は通過していないうえ、内実も大きく違う。

米国では、全国民に対して大人ひとり1200ドル(約13万円)、子供ひとり500ドルを給付することになっており、4月中には給付される見込みだ。一方の日本は1世帯あたり30万円を給付するという内容だが、所得の大幅な減少などが要件になっている。所得制限を付ければ、審査に時間がかかり、給付も遅れる。早くて5月中の支給だという。

売り上げが大きく減った中小企業に最大200万円、個人事業に最大100万円の給付を行う制度が新設される方向だが、やはり売上高激減など条件が厳しい。大幅に条件が緩和されたとはいえ、雇用調整助成金も、冒頭のように手続きが必要だ。

4月4日には国土交通大臣政務官の佐々木紀衆議院議員がツイッターで、「国は自粛要請しています。感染拡大を国のせいにしないでくださいね」とツイートし、これもネット上で炎上した。7日には赤羽一嘉・国土交通相が謝罪に追い込まれた。安倍内閣としては精一杯やっている、と言いたいのだろう。だが、これから日本経済を襲う大暴風雨に耐えるのに、これらの施策だけで大丈夫なのか。