国も「広く社会に良い影響をもたらす」と期待

国土交通省がまとめた『令和元年版交通政策白書』ではMaaSについて、「出発地から目的地まで、利用者にとっての最適経路を提示するとともに、複数の交通手段やその他のサービスを含め、一括して提供するサービス」と定義している。その結果、ドアtoドアの移動に近い形で、「ワンストップでシームレスな移動が可能となる」と期待している。

その上で白書は、MaaSがもたらすメリットとして、公共交通の使い勝手が向上するのみならず、広く社会に良い影響をもたらすということを示している。

さらには街づくりにも言及して、「インフラ整備など都市や地域のあり方にも影響をもたらす可能性があり、都市分野、地域の経済社会など様々な分野にインパクトをもたらすイノベーションであるとも位置づけられている」と分析する。イノベーションとは、「革新」あるいは「新機軸」のことである。

DBJ(日本政策投資銀行)は「MaaSの現状と展望」(2018年11月15日)と題した調査研究レポートで、各レベルでのサービスの統合を目指すMaaSを「サービス統合型」、各交通事業者がそれぞれの輸送モード単体でサービスを便利にしようという取り組みは「サービス高度化型」、さらに輸送サービス自体ではなくその周辺に位置づけられるサービスであっても、移動に関連して、新しい技術やビジネスモデルを活用するもの全体を広くMaaSと呼ぶこともあるが、これを「その他関連ビジネス型」と分類している。スタート当初は「サービス統合型」だったMaaSが、多様に展開されて、様々な意味を持ち始めているのだ。

ネットに常時接続された自動運転シェアカーの世界

MaaSとほぼ同時期に現れた言葉に、ドイツの大手自動車メーカー、ダイムラーが2016年に発表したCASEがある。次世代自動車の、4つのトレンドの頭文字をつなげて表現した造語である。ダイムラーは現在、事業会社であるメルセデス・ベンツなどの持ち株会社となっている。そのメルセデス・ベンツ日本のウェブサイトによれば、最初のCはインターネットでクルマを外部につなぐ“connected(コネクテッド)”のCだ。

なおconnectedのカタカナ表記をトヨタ自動車やマツダは「コネクティッド」、日産自動車や本田技研工業は「コネクテッド」としている。続いてAは自動運転を意味する“autonomous(オートノマス)”のA。Sはみんなで共有するシェアリングを中心に、多様なサービスを意味する“Shared & Services(シェアリング&サービス)”のS。最後のEは“電気”を意味する“Electric(エレクトリック)”のE。電気自動車を含む電動化である。