全30巻で累計351万部という女子小学生向けの小説シリーズ『一期一会』をご存じだろうか。ライターの飯田一史氏は「文具から生まれた異例の作品群で、2014年に完結した後も売れ続けています。中心テーマは『恋』ですが、本の構成は従来の児童向け読みものとはひと味違います」という――。

2014年から新刊を出していないのに……

全30巻で累計351万部を売り上げた女子小学生向け小説シリーズがある。学研プラス刊行の『一期一会』だ。2007年から刊行され、2014年に完結した今も根強い人気を集めている。

チーム151E☆『ありがとうフィナーレ。』(学研プラス)
チーム151E☆『ありがとうフィナーレ。』(学研プラス)

「学校読書調査」を見ると、2019年の最新データでも小5、小6女子の「読んだ本」ランキング上位に複数タイトルが食い込んでいる。同様に「朝の読書」で読まれた本ランキングでも2017年の小学生部門で7位、2018年は18位と、シリーズ終了後も支持されていることが確認できる。

この作品が異例な点は2つある。1つ目は文具を手がけるメーカー「マインドウェイブ」が展開する同名の「文具から生まれた小説」であること。2つ目は2014年以来、新刊が出ていないにもかかわらず、いまだ読まれ続けていることだ。

なぜこの小説シリーズが異色のロングセラーとなったのだろうか。

物語のない文具から、生まれた物語

「一期一会」は、マインドウェイブが2004年からメモ帳や便せん、ペンケースなどで展開している文具シリーズだ。まず中高生を中心にヒットし、流行が進むにつれて小学生にも下りてきた。そのタイミングで小説版『一期一会』はスタートしている。

マインドウェイブと学研は『一期一会』以前から他のキャラクターでも絵本を作るなどの付き合いがあった。それが小説版『一期一会』が生まれるきっかけだ。