大人になってから英語を勉強しても手遅れなのか。32歳から本気で英語に取り組んだ東北大学の瀧靖之教授は「30歳でも50歳でも80歳でも、本気で頑張れば英語を身につけることができる。そのためには脳の働きを理解する必要がある」という――。

※本稿は、瀧靖之『脳が忘れない 英語の「超」勉強法』(青春出版社)の一部を再編集したものです。

オンラインレッスンの概念。テレミーティング。会議。
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ネイティブのジョークを聞き取れなかった

英語が上手になりたいと思って、私が本気になって取り組んだのは、32~33歳のときでした。

もちろん、中学生のときから学校で英語を習ってきましたし、大学は医学部に入りました。さぞかし英語が得意だったのだろうと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。それどころか、まったくの謙遜抜きで人並み以下のレベルだったのです。

たしかに、大学入試で英語を勉強しましたから、ある程度文は読めました。ところが聴き取りや会話になると、からっきしダメだったのです。

決定的な体験をしたのが30歳のときでした。結婚したばかりの妻とともにハワイに行き、ワイキキで観光用のトロリーバスに乗ろうとしたときのことです。バスの乗り場に行くと、大柄な男性の係員が近づいてきて「ヤロー? レッド?」と声をかけてくるではありませんか。何を言っているのかわからず、きょとんとしていると、「ヤロー? ヤロー?」とたたみかけてくる。これには困り果てました。

あとでわかったのですが、ワイキキのトロリーバスは路線によって色分けされているため、どの路線に乗るのかを聞かれたのだと思います。たぶん、黄色の路線に乗るか赤の路線に乗るかで、「Yellow or red?」と言われたのでしょうが、それがまったくわかりませんでした。「yellow」が「ヤロー」としか聞こえないのです。

英語がしゃべれる人からしたら当たり前だったでしょうが、当時の私は、「yellow」といえばカタカナの「イエロー」という発音しか聞いたことがなかったのです。

困った私は、もしかしたら「years old」のことかもしれないと思い、自分の年齢を答えました。すると、相手は「はあ? 何を言っているんだ」という顔をするばかり。今思い出しただけでも、顔から火が出そうな体験です。

「これは本当にマズい。なんとかしないといけない」と、さすがの私も危機感を抱きました。そして、本気で英語に取り組まなくてはいけないと一念発起したのです。