しかし、この最も重要な終わりの2つのセンテンスをわざわざ敵に知らせる必要はない。だから信玄公は旗に記さなかったのだと私は考えています。

情報がいちばん重要であり、最も価値が高い

銀行マンとして社会人になって以来、私は営業の叩き上げです。営業をやってきて、特に課長以上になってとても勉強になったのは、情報がいちばん重要であり、最も価値が高いということ、つまり「難知如陰」です。私自身、常にあらゆる情報を集めています。お客様をお訪ねするし、お客様も来てくださる。こちらの持っている情報を聞いたら、先方も情報をくれる。情報の対価はお金ではなく情報なんです。

2016年に社長になったとき、ガリバーだった野村証券さんを追い抜いて業界1位になるなんていう絵空事は言いませんでした。ただし、圧倒的な2位になると宣言した。しかし、いまはそう言っていません。なぜなら、証券業界では何が1位なのかわからなくなってきているからです。1位を目指すことは否定しませんが、いまはSMBCグループ各社とのシナジーを活かし、オンリーワンにならなければならない。そう思っています。

金融というのはサービス業である以上、昨日と同じサービス、他社と同じサービスをやっていたら、手数料がゼロに収束していくことは自明です。だからこそ、いままでと違うサービス、他社と違うサービスをつくり続けて一歩先を行くしかない。社員たちにもそのことを強く言っています。

ITも駆使しなければなりませんが、ネットやSNSだけで情報がとれるはずはありません。フェース・トゥ・フェース、人と会わずして、なぜ情報が得られようかということです。お客様との会話の中から、そのお客様にどんなサービスを提供するのがいちばんいいのか、一人ひとりの営業がプロとしてイメージできなければなりません。

社長になって、2000人いる営業を約2倍の3900人に増やすと宣言し、全国約140の支店を回りました。お客様は金融の専門家ではありません。私たちが金融のプロなのだから、一人ひとりのお客様の年齢や家族構成、お孫さんの年齢、保有資産、好き嫌いなどを知ったうえで、商品とサービスを提案しなければならない。しかし、多くのお客様を担当しているために、知らず知らずのうちに誰に対しても同じ提案をするから失敗するんだと。

私自身が営業マンだった経験からも、1人で担当できるお客様は、150人が限界でしょう。それなのに、1人の営業が300人、350人ものお客様を担当するのは無理がある。せめて1人の営業の担当を150人にしたい。ほんとうは100人にしたいくらいです。お客様本位のビジネスを実現するためには、フェース・トゥ・フェースでコンサルティングできる人員が不可欠。だから、営業を増やして、徐々に理想に近づけたいと思っています。