「郵便ポストが赤いのも電信柱が高いのも社長の責任」

「郵便ポストが赤いのも電信柱が高いのも社長の責任」というフレーズは、本当に多くの社長が心に刻んでいる。一倉語録の代表的な1つである。

創業者の黒田社長は、売上10億円弱のときにはじめて一倉ゼミに参加されたそうである。比較的順調に成長してきたが、10億円を前に一進一退が続き、これまで自信を持って経営してきた会社はなんとか黒字ではあるが、打開策を求めての受講だったと当時を思い出しながら話してくれた。

ビルメンテナンスで独立し、持ち前の営業力で得意先を開拓するトップ営業スタイルだったこともあり、さらなる成長に向けて進むには、幹部社員の脆弱ぜいじゃくさに不満を持っていたのだと、次のように話された。

「何であいつらは、俺の言うことがわからないんだ!」「幹部を変えてやろう、成長させてやろうと毎日怒鳴っていたが、成長させるための何かヒントはないか」とゼミに参加したというのである。そうしたところ、一倉ゼミの講座の中で、「郵便ポスト~」の言葉を聞いて、最初は「俺はしっかりやっている」「あいつらが……」という気持ちばかりでなかなか素直には聞けなかったようだ。

「人にやれやれ言うこと」が最大の無責任

しかし、先生は全ては社長の責任と言うし、正直納得がいかなかったから初日の夕方の質問時間に並んで、座った瞬間、凄い勢いで「冗談じゃない! 社員に責任を押し付けて! バカヤロー、帰れ!」と言われたのである。さすがに黒田社長も「コノヤロー!」と思い、「もう帰ろうか」と一瞬考えたが、高い授業料がもったいないので2日目も受講していた。

すると、先生は何もなかったようにニコニコしているし、「何なんだ」とも思っていたときに、いつまでも昨夜のことにこだわっている自分に気がついた。「自分は変わらずに、人ばかり変えようとしている自分を少し客観的に見られるようになった」と気づいたのである。

講座の中で、オーナーでもない、株主でもない、ましてや社長並みの高い給料も払っていないのに、社員に「やれ権限委譲だ!」「自分で考えろ!」は社員にすれば、「冗談じゃない!」という話があった。社長がやるべきことを放棄しておいて、「人にやれやれ言うことが最大の無責任だ!」との講義に目が覚め、「まさに自分のことだと。腑に落ちた」と話してくれた。