業態転換はすでに進めてきた

もっとも、幸楽苑HDはこうした考えを以前から持っていた。対策のひとつが、他の外食企業とフランチャイズ(FC)契約を結んで複数ブランドの外食店をFC展開を行うことだ。「その他外食事業」において、19年9月末時点でステーキ店「いきなり!ステーキ」直営店16店、焼肉店「焼肉ライク」直営店3店、からあげ店「からやま」直営店1店を展開している。今後は閉鎖する51店の一部をこうした業態に転換し、収益性を高めるとともにリスク分散化を図るものとみられる。

実際、最近もこうした業態転換を行っている。2019年10月に「幸楽苑国分寺西店」(東京都国分寺市)を閉店し、12月には跡地に「焼肉ライク立川通り店」(同)をオープンした。

また、今回の大量閉鎖・業態転換には、自社競合を解消する狙いもある。同社はこれまでに「幸楽苑」の店舗同士の競合の解消を進めてきた。例えば、先述の「幸楽苑国分寺西店」は「幸楽苑国立府中インター店」(東京都国立市)と「幸楽苑武蔵村山店」(同武蔵村山市)に挟まれていた上に、店舗間の距離はそれぞれ車で約20分程度と近接していた。ここで顧客の奪い合いが起きていたため、「幸楽苑国分寺西店」を「焼肉ライク立川通り店」に転換したとみられる。ラーメン店と焼肉店の競合度は低いので、自社競合の解消につながる。

いきステとFC契約を結ぶも、いきステ側が不調に

このように幸楽苑HDは業態転換を進めて収益性を高め、リスク分散化を図る方針だ。だが、こうした方針には危うさも漂う。リスク分散はできるだろうが、収益性が逆に低下する可能性がある。

幸楽苑HDはこれまで主に「いきなり!ステーキ」への転換を進めてきた。2017年にフランチャイズ契約を結び、業態転換を始めた当時は「いきなり!ステーキ」は勢いがあった。だが、最近はブームが去り、勢いが急速に衰えている。「いきなり!ステーキ」を展開するペッパーフードサービスは、不振を受けて同ブランドの不採算店の大量閉鎖を決めた。

閉店する「いきなり!ステーキ」の一覧を見てみると、郊外ロードサイド店が多い。その理由は、郊外ロードサイドの飲食店でメインターゲットとすべき家族連れを取り込めるようなメニュー構成と店舗構造になっていないためだ。家族連れにそっぽを向かれ、収益が低下して大量閉店に追い込まれたと筆者は分析している。