「テンポのいい会話」は実はよくない

よく考えて質問をすることも、いい聞き手になるのに欠かせない。

間を取りながら話すのもおすすめだ。沈黙は相手の言ったことを受けとめ、自動的にあいづちを打っていないことを意味する。沈黙がなくぽんぽんと進む会話は一見刺激的だが、アイデアをやりとりするのに最も効果的な方法とは言えない。

テンポの速い会話はうわべだけのものになりがちだ。だれかの話を聞くには、いったん間を置いて咀嚼し、十分考えてから答える必要がある。

相手が話し終える前に答えを考えだすのは、話にしっかり集中できていない証拠だ。ターミネーターのような機械的な受け答えで会話に加わっているふりをし、無駄なエネルギーを割くまいとしている。

自分が話を聞けていると、どうすればわかるのだろう? いちばんの目安はおそらく、「そのやりとりにもとづいてなんらかの行動を起こしたかどうか」にある。

チームのアドバイスにもとづいて行動するのは、有益なチーム作りの練習になる。アドバイスに従って行動を起こせば、リーダーがチームの話を聞いていたこと、それが違いを生み出したことを示せる。さらに天才の意見にもとづいて方針を変えれば、説得力のある形でその天才に権限を委ねられるだろう。

「話を聞く」には4つのタイプがある

人はみな、話を聞いているふりの達人になる。ただし「話を聞く」とひと口に言っても、まったく一方通行の聞き方から、話し手と聞き手のどちらにも利益がある活発な聞き方まで幅広い。そこで私は、フィリップ・ハンセイカーとアントニー・アレサンドラの共著『マネジメントの技法(The Art of Managing People)』(増補改訂版あり)をヒントに、聞き手を4つのタイプに分け、天才を率いる場面に絡めて次のように定義した。

その4つとは、「自分本位の聞き手」「うわの空の聞き手」「取引する聞き手」「創造的な聞き手」である。

自分本位の聞き手
自分本位の聞き手は、自分自身と会話する。話し手はそこにいないも同然だ。

このタイプにとって、会話は自尊心を高める手段であり、相手がその会話に何を期待していようと気にしない。たびたび会話を遮るし、話題を自分に向けたがる。結論だけ聞いていきなり立ち去ることも多い。

長く権力の座にあるリーダーほど、このカテゴリーに陥りがちである。何年も同じ地位にいるリーダーは、自分が話を聞いていないことに気づけない。