テレビの「100人アンケート」は話にならない

ここまで読んでいただいた読者なら、テレビでよく放送されている「緊急100人アンケート」の類は、話半分で聞き流したほうが無難だということは理解してもらえるでしょう。無作為で対象者が選ばれているわけでもなく、まさに手当たり次第に街角などでインタビューして100人の声をかき集めただけであって、世論でも一般的な声でもないのです。

一例として、麻薬取締法違反で逮捕され、執行猶予付きの有罪判決を受けたピエール瀧氏が出演している映画の上映の是非について、フジテレビの「とくダネ!」で100人アンケートの結果を紹介していて、82人が出演作の公開に賛成していました(2019年3月21日放送)。しかし、これを見て「圧倒的多数が賛成している」と結論づけることはできません。

そもそも100人程度を対象とした場合、仮に無作為で回答者が選ばれていたとしても±10%程度の誤差は避けられません。賛成が50%でも、実際は40%から60%までの可能性があるのです。実際には丸の内で聞いても、新橋で聞いても単に手当たり次第に聞いているだけでバイアスがかかってしまい、無作為ですらないので、70%が賛成だったり、30%しか賛成していなかったりということも起こりえます。

マスコミのリテラシーが全く改善されていない

田村秀『データ・リテラシーの鍛え方 “思い込み”で社会が歪む』(イースト新書)

特に阪神上場の問題のように、賛否が激しく分かれるようなテーマの場合、あるテレビ局が聞いた場合は賛成が80%、別のテレビ局が聞いた場合は20%ということもありえるのです。

結局のところ、あることについて回答した100人の声に過ぎないのであって、一般的にそうだと考えてはいけません。それにもかかわらず、テレビ局がそのようなアンケートを延々と続けているのは、手っ取り早く一般市民の声が把握できるといまだに考えているからかもしれません。

このような安易なやり方を続けているということは、マスコミのデータ・リテラシーが全く改善されていないということを、自ら明らかにしているだけです。

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