再配達のエネルギーと燃料代はバカにならない

宅配の仕事は、晴れの日だけではない。雨の日も風の日も運ぶ。千葉だから雪の降る日は少ないとはいえ、雪が降っても仕事は休みにならない。雨の日はレインウエアを着て、荷物を濡らさないようにして配達する。

「駅ビルのテナントの場合は納品所があるのでそれほど濡れることはありません。駅前の商業地帯は一軒一軒、歩いて配達するしかないため、荷物は濡らさなくても私たちドライバーは濡れます。でも、雨や雪は仕方がありません。むしろ、慎重な対応を求められるのが、荷物のお届け時に在宅していないお客さまへの『再配達』です」

現在、宅配業界で最大の課題は再配達を減らすことだ。業界平均で2割の荷物が再配達に回るとされている。ドライバーが再配達にかけるエネルギー、車の燃料代はバカにならない。なんとか再配達を減らすために各社、知恵を絞っている。

「宅配便ボックスの設置」が解決のカギと言われているけれど、それが最上の策ではない。なぜなら、繁忙期は宅配ボックスがつねにいっぱいになるからだ。宅配ボックスに入りきらない荷物はドライバーが持ち帰ることとなる。また、そもそもスキー板、ゴルフバッグのように宅配ボックスには入らない大きな荷物も少なくない。これまたドライバーが持ち帰る必要がある。

女性ドライバーならドアを開ける人がいる

もうひとつ、大きな問題は、「自宅にいても受け取りに出られない人」の存在だ。ベルを鳴らしても、たまたまトイレや風呂に入っている場合がある。また、「夜は怖いから」「すっぴんだから」といった理由で出られない人もいる。在宅と思われる場合でも、受取人が出てこなければドライバーは不在票を置いて、再配達するしかない。この問題はなかなか解決が難しい。しかし、山本が教えてくれた。

「女性ドライバーが配達すると、安心して受け取りに出てこられる同性の方は多いです」

佐川に限らず、業界が女性ドライバーを歓迎しているのは、こういう側面があるからだ。ドライバーが同性ならば、ひとり暮らしの女性も扉を開きやすい。夜遅くでも、すっぴんでも、ドライバーが女性なら安心感があり、抵抗感も小さくなるからだ。

ただ、それでもまだ再配達はなかなか減らない。不在が一度ではなく、次に訪ねても、またいなかった場合はどうなるのか。

配達荷物の保管期限は初回配達日を含む8日間だ(一部サービスを除く)。保管期限を過ぎてしまったら送り主に返送することになる。

撮影=石橋 素幸
女性ドライバーの配達に安心する女性客は多いという