外国人を増やせば収穫量も耕地面積も増える

悩みに悩んだ末に、男性は長年続けてきたメロン栽培をやめた。代わりに育て始めたのは、小松菜や水菜といった葉物野菜だ。年間を通じて栽培でき、実習生に毎月賃金を払うにはうってつけだった。

今では実習生を6人にまで増やし、耕地面積も2.5倍。気づけば「家族経営の農家」から「農業経営者」になっていた。売り上げも2倍になったそうだ。

「稼ぐ大規模農家ほど、外国人への“依存”も進む傾向にある」。JA茨城県中央会の幹部はそう話す。それを裏付けるように、農業に従事する外国人の人数と1農家あたりの耕地面積は比例関係にある。規模を拡大し、農作物の販売金額が1億円を超える“稼ぐ農家”も続出。減少傾向だった産出額も2002年以降増加に転じ、2008年以降は全国2位の座を守っている。その躍進を支えるのが、実習生だというのだ。

「実習生を受け入れることで収穫量が増え、人手があるので耕地面積を増やし、さらに実習生を増やすという循環でどんどん売り上げを伸ばす農家が増えています。もはや実習生がいなければ茨城の農業は成り立たないのです」(JA茨城県中央会の幹部)

「いい実習生」の奪い合いが起きている

実習生がいるからこそ維持できた側面のある「首都圏の台所」の看板。しかしその先行きには不安もある。

先ほどのメロン栽培をやめた農家の男性も「今は悔いはない」と話す一方で、不安も漏らした。

「最近は他の産地も実習生を増やしていて、いい実習生に来てもらうのが難しくなってきています。もし実習生がいなくなれば、今の規模の耕地はとても維持できない。そうなったら、農業をやめるしかないでしょう」

日本側の窓口として鉾田市の農家に実習生を送っている監理団体の幹部で、自らも農業を営む男性もこう話す。

「他の地域や産業との実習生の奪い合いは激しくなってきています。中国もベトナムも国内の賃金が上がる中で、いつまでも技能実習生として日本に来てくれる人材がいるだろうか。実習生が確保できなくなったら、茨城の農家の多くは立ち行かなくなる。そうなると東京から野菜が消える……」

賃金や待遇の不満がSNSですぐに広がる

中国やベトナムなどからやってきた技能実習生たちの中には、配偶者や子どもを故郷に残してきた人もいる。そんな実習生たちにとって、スマートフォンは手放せないもの。休憩時間や一日の仕事が終わった後にはSNSやテレビ電話ができるアプリなどで家族と連絡を取り合う姿が見られた。

来日している実習生同士もSNSで情報を交換し合っているので、「あの地域は賃金が低い」、「待遇が悪い」といった不満はすぐに広がり、次からの実習希望者の減少に直結する。