グチには自己カウンセリング効果がある

なお、こうした方々におすすめのストレスマネジメントのコツをひとつご紹介しておきましょう。

私のおすすめは「グチをこぼすこと」。学校の先生やお坊さんも、グチをこぼしたくらいでは叱られません。いや、むしろ積極的にグチを言ったほうがいいのです。

そもそも、他人にグチをこぼす行為にはストレス解消効果があります。みなさんも経験があると思いますが、「いかに嫌な思いをしたか」とか「どんなに理不尽な目に遭ったか」といったことを親しい友人や家族などにグチっていると、頭の中に巣食っていたもやもやが吐き出されてすっきりした気持ちになります。

グチる前は塞ぎ込んでいたのに、話しているうちにもうどうでもいいような気分になってくることも少なくありません。

それに、グチっていると、自分が受けたストレスの状況を筋道立ててまとめながら話すことになるため、頭の中が整理整頓されてきます。話しているうちに「ああ、こう考えればよかったのか」「そうか、こういう見方もできるな」といった気づきが得られることも多く、グチったことによって問題をうまく解決する糸口が見えてくることもあるのです。

言わば、一種の自己カウンセリング効果が期待できるわけですね。

ですから、ハメをはずしたり発散したりするのが苦手な人ほど「グチのストレス解消効果」を活用してたまったうっ憤を晴らしていくべきです。ただ、同じ職場の仲間にグチってしまうと、日頃の人間関係でなにかと角が立つことが多いので、なるべくなら仕事とは無関係の人を選んでグチるといいでしょう。

相互扶助の「グチ会」でストレスをコントロールする

もちろん、家族にグチるのでも構いませんが、できれば家族と職場関係以外で、3人くらいは「グチのこぼし先」を確保しておきたいところ。それも、こちらがグチをこぼしてばかりではなく、相手のグチもちゃんと聞いてあげて、定期的に相互扶助の「グチ会」を開くような関係を築いていくのが理想です。

私は、グチをこぼすことは「逃げ場をつくる」ようなものだと考えています。

結局、学校の先生もお坊さんも役人も、自分の逃げ場がないからどんどん追い詰められてしまうのです。不満や不安などの感情のはけ口もなく、SОSすら出せないような逃げ場のない環境は、精神衛生上たいへん不健康です。

そんな息苦しい環境の中で自分を抑えつけ、来る日も来る日も激務に追いまくられていたら、先生やお坊さんならずとも、どんなに偉い人でも脳疲労やうつになって心身を病んでしまうことでしょう。

だから、とにかく自分から意識して逃げ場をつくっていくことが大切。グチのこぼし先という「脱出口」をしっかりキープしておいて、もやもやがたまってきたら、いつでもそこに緊急避難できるようにしておくといいのです。きっと、その避難所があるというだけで、心と体の風通しがだいぶ違ってくるのではないでしょうか。