ただし人間は、どんな人間の言葉でも素直に受け入れられるわけではない。

面白い実験がある。ある人(Cさん)に向かって、同じ内容の忠告をAさん、Bさんに言わせる。Aさんは清潔感溢れるイケメン。Bさんは不潔感溢れるメタボ。まったく同じ内容の忠告なのだから、Cさんは両者の忠告を聞くかと思いきや、さにあらず。Aさんの忠告は受け入れても、Bさんの言葉には耳を貸さないといった違いが出てくるのである。

同じことを説得するのでも、信頼感のある人のほうが受け入れられやすいなど、説得者側の要因で結果が変わることが心理学の研究で明らかになっている。これは努力でどうなるものでもない、人間的魅力が影響する部分が大きい。どこの馬の骨ともわからない劉邦が、前漢の初代皇帝に上り詰めたのは、部下との間に互いによき説得者となれる関係を築けたからだろう。
同じことを説得するのでも、信頼感のある人のほうが受け入れられやすいなど、説得者側の要因で結果が変わることが心理学の研究で明らかになっている。これは努力でどうなるものでもない、人間的魅力が影響する部分が大きい。どこの馬の骨ともわからない劉邦が、前漢の初代皇帝に上り詰めたのは、部下との間に互いによき説得者となれる関係を築けたからだろう。

これを、説得者要因という。人が説得を受け入れるか否かは、被説得者が説得者に対して好感を持っているかどうかにかかっているのだ。すぐさま思い浮かぶのは、江戸城無血開城の場面だ。勝海舟と西郷隆盛は会った瞬間にお互い認め合う間柄になったというが、おそらく好感の持てる説得者同士だったからに違いない。人間は、好きな人の言葉を受け入れる生き物なのである。

では、互いによき説得者となれるサポーターを常に周囲に配置するためには、いったい何が必要なのだろうか。

楚漢戦争の主人公、項羽と劉邦を比較すると面白い。項羽は楚の将軍だった項燕の孫であり、項氏は楚の将軍を輩出した名門である。一方の劉邦は、農家の三男で品のない男。要するに、「馬の骨」であった。この2人は、楚漢戦争で相まみえることになるわけだが、軍配は育ちの悪い劉邦に上がる。なぜなら、劉邦は人間的魅力に溢れ、たくさんのサポーターが集まったからだ。一方の項羽は、氏素性はよかったが人間的魅力に乏しく、人望がなかった。

劉邦は楚漢戦争に勝利して中国全土を統一し前漢を興すことになるが、周囲の人が劉邦に天下を取らせたいと願ったことが、勝利の最大の要因である。生まれながらに人間的魅力を備えた人物は、サポーターから的確な忠告を得られると同時に、いざというときには「この人の言うことなら」と力を尽くしてもらえる。

(構成=山田清機)