人が人を評価するなんて、おこがましすぎる

成果至上主義がもっとも反映された「鬼」の評価制度。それが「Up or Out」でした。社員を相対評価し、下から2%の人に対して、無慈悲な宣告を行うのです。

自ら掲げたミッションをクリアし、成果を上げた者はランクアップして、能力給をもらえる。頑張ってしっかり成果を出せば評価につながるのですから、とてもいい制度だと思いませんか? 

すくなくとも当時のわたしは、そう信じていました。

けれども……お察しのとおり、うまくいくはずなんて、ありませんよね。行きすぎた成果至上主義は、大きな歪みを生みます。

今ならこんな会社、だれが働いてみたいと思うでしょうか?

そもそも、人が人を評価するなんて、あまりにおこがましいのです。ましてや、「値段をつける」なんておそろしすぎました。評価基準を設けても、それもしょせん人が決めたことです。全員が全員、納得できるものにはなりません。

それなら、「お金を唯一の価値基準にすることは、もうやめよう」。

結果、生まれたものが「100人100通りの働き方」を受け入れます、という会社のあり方でした。

サイボウズは「市場価格」で給与を決める

では、サイボウズの給与はどうなっているのか。

答えは「市場価格」です。

多くの会社では、人事考課を行う際、面談を行い、個人目標やKPI(重要な業績評価指標)と照らし合わせます。「これは自分でどれだけできてると思う?」「もしこの数値に納得がいかないなら説明してほしいんだけど」……想像するだけで、お互いの胃が痛くなりそうですよね。

会社としては予算も限られていますし、あまり大盤振る舞いはしたくない。だから社員に対して、比較的厳しい評価をつける。逆に社員は、なるべくたくさん給与をもらいたい。だから自分がいかに貢献したかをアピールします。

しかも、そこには別の要素として、生々しい「人間関係」も絡んでくるわけです。ちょっと無茶ですよね。

そこでサイボウズでは、人事考課と業務フィードバックを切り分けることにしました。フィードバックはあくまで、社員がより力を発揮するために。