人付き合いのコツ

フランス文学者らしく、ユーモラスな語り口の中にも明快な論旨で、人付き合いのコツをずばりと言い当てている河盛好蔵の『人とつき合う法』(新潮文庫)は、「酒席のことは、その場かぎりとして、忘れてしまうこと」を勧めています。

プラトン 著●哲学者ソクラテスを中心に宴会に集った才人たちが、愛や性的欲望について議論を交わす。著者はソクラテスの弟子のプラトン。(光文社古典新訳文庫)

太宰治も『新ハムレット』(新潮文庫)の中で登場人物に、「座が乱れてきたなと感じたらすぐに席を立ち、そのとき本来の会費より多めに置いていくとよい」と、スマートな酒の飲み方について語らせています。

もっとも太宰本人は酒癖が悪いことで有名だったので、自分で書いたことの実行はできていなかったようですが。

なかには「飲みに誘いたくとも体質的にお酒が飲めない」という人もいると思います。そういう人はウーロン茶を飲みながらでも、その場の雰囲気に合わせて楽しく話せれば問題はないし、それも嫌なら、無理して酒の席に付き合わなくてもいいのです。

私は以前、上司・部下を問わず職場の人とは飲まない主義だという人から、「職場で浮いているように感じる」と相談を受けたことがあります。「飲みに誘うべきでしょうか」と言うのです。私は「嫌なのに無理をして付き合うことはありません。仕事をきっちりしていれば問題ないでしょう」とアドバイスしました。

先に挙げた『人とつき合う法』は、「酒はつき合いで飲むべきものではなく、自分自身の楽しみのために飲むのが本筋であろう」として、「『あの男はつき合いのいいやつだ』という言葉には常に多少の軽蔑が含まれている。あたかも、『あの男はつき合いにくいや』という言葉のなかに、一種の敬意が含まれているように」と指摘しています。

「あいつは付き合いにくいやつだ」と思われるのも、ある意味で勲章。「誘えない」と悩んだり、気を使って無理に付き合う必要などないのだ、ということです。

▼無理に付き合うよりも仕事で示せ

(構成=久保田正志)
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