最低賃金の持続的引き上げには客観的実証分析が不可欠

以上のポイントに沿った施策を具体的に推進するにあたり、以下の仕組みを提案したい。

第1に、エビデンスに基づき中期的な最低賃金引き上げ方針の提案を行う「専門委員会」の設置である。現状、公労使三者構成の中央最低賃金審議会で最低賃金の目安が決められるが、必ずしも十分な分析や実証に基づいて決められているとは言えず、その時その時の公労使(政労使)の力関係で決まっている印象がある。今後、最低賃金の持続的引き上げを成功裏に進めるためには、客観的な実証分析は不可欠である。

そうした意味で、英国の「低賃金委員会」を参考に公労使三者構成とした「専門委員会」を設置したうえで、その下部組織として労働経済および産業政策の専門家を含む事務局を置き、調査・実証分析を行うことを提案したい。より具体的には、地域別・産業別に人手不足状況・賃金状況・経営者状況等を把握し、エビデンスに基づく複数の中期的な最低賃金引き上げプランと支援政策メニューの提言を行う。それを今秋以降半年程度かけて行い、来年の夏までに専門委員会が提言書を取りまとめることとする。

その提言を参考に、中央最低賃金審議会が毎年の最低賃金額の目安を建議すればよいだろう。その後も事務局が継続して調査・分析を行い、「専門委員会の提言→中央最低賃金審議会の建議→地方最低賃金審議会の決定」というプロセスを確立する。

第2に、最低賃金引き上げを円滑に進めるにあたって必要な政策支援メニューを決める「官民協議体」を地域別に設置する。上記専門委員会報告をベースに、地方最低賃金審議会(最低賃金額を決定)と連携しつつ、地域の実情に合った政策パッケージを取りまとめる。政策パッケージには、企業間連携・商慣行見直し積極的に推し進めるための、各種コンサルタントや地域金融機関などコーディネーターの役割を重視したプログラムを織り込むことがポイントとなろう。

【関連記事】
「エース社員が辞める」残念な会社の特徴
入社初日3時間で会社辞めた新卒の言い草
会社が絶対手放さない、優秀人材6タイプ
"採用面接の5分間"でボロが出る人の特徴
あのサーティワンが赤字と店舗減に苦しむ背景