10月から最低賃金が上がる。時給の引き上げ額は過去最大だ。だが決定までは揉めた。政治サイドが大幅引き上げを主張した一方、商工会議所が強く反対したからだ。最低賃金は今後も引き上げていくべきなのか。日本総研の山田久主席研究員が考察する――。
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経済学的には、生産性の上昇を上回る最低賃金の増加は、失業の増加を招くというのだが……(※写真はイメージです)

今年は過去最大の引き上げ幅に

10月以降、最低賃金が引き上げられる。全国加重平均は901円となり、平均引き上げ幅は27円と、2002年に時給単独で示す方式になって以来、最大の引き上げとなる。

最低賃金制度とは、すべての労働者が下回ってはならない時給を法律で保障するもので、違反した使用者には50万円以下の罰金が課される。ワーキング・プア(働く貧困層)の解消に向けて、政府は2000年代半ば以降最低賃金の引き上げを誘導してきた。

さらに近年、経済好循環につながる賃上げのトリガーにしたいという政府の思惑を受けて、最低賃金の引き上げ幅は高めで推移してきたが、今年は決着に至るまでにひと悶着あった。

参院選を控えて、政治サイドから大幅引き上げを主張する声が上がり、これに対して商工会議所が強く牽制する緊急要望を公表した。結局、今年は引き上げ「率」でみればここ数年来のペースに収まったものの、来年を展望すると対立の構図は一層強まることが予想される。

景気減速で中小企業の景況感悪化が予想される一方、政治サイドでは衆院解散総選挙の可能性も絡んで、賃上げを加速したい思惑が働くと考えられるからである。