10月16日~、四川省成都など内陸部の都市で次々と反日デモが発生した。(PANA=写真)
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10月16日~、四川省成都など内陸部の都市で次々と反日デモが発生した。(PANA=写真)

もうひとつの政治リスクとして、今回突きつけられたのはレアアース禁輸騒動だ。尖閣事件後、中国側はレアアース禁輸カードで日本企業を揺さぶり、実際に対日輸出を一時停止した。レアアースはハイブリッドカーや電気自動車、半導体、光化学製品など日本の先端技術を支える希少資源だが、これを日本は9割以上中国に頼っており、禁輸措置がとられれば日本の製造業は立ち行かない、と騒ぎになった。

しかし、対中資源輸入に関わる商社関係者は「レアアースの総量規制は今に始まった問題ではない。大企業は1年分程度の備蓄ができている」という。また、禁輸によってレアアースの価格がつり上がれば、中国以外の国も資源開発に動きだし代替品開発も進むという見通しもある。

そういう意味ではレアアース禁輸騒動は、日本企業側の過剰反応ともいえるが、一方、別の商社関係者は「日本の製造業に必要不可欠な資源の9割以上を中国に依存している状況がこれまで放置されていたのは日本政府の怠慢にほかならない」と指摘する。今回、企業が騒いだことで、日本政府が資源外交の重い腰を上げたことはけがの功名といえるかもしれない。

JETRO(日本貿易振興機構)広州事務所の横田光弘所長は「レアアース、石油といった経済安全保障上の戦略物資の安定供給維持は(1)備蓄、(2)資源国との友好関係、(3)リスク分散が必要」と指摘する。本来なら国家が戦略的に対応すべきことかもしれないが、日本の場合、こういった役割の多くを主に商社など民間企業が負ってきた。

企業が資源を市場からかき集める資金源は、日本の「ものづくり技術」と「サービス・営業力」だ。「結局、中国や新興国が日本に求める技術力やサービス・営業力を日本が確保し続けることが最大の経済安全保障」と横田所長は言う。

JETRO海外調査部が10月に行ったアンケート調査によると、日系対中進出企業(有効回答806社)にとっての「経営上の問題点」の第1位は「従業員の賃金上昇」(79.6%)だった。同調査によれば中国の今年の賃金上昇率は前年比12.1%で、ベトナム(14.2%)、ミャンマー(13.0%)につぐ3番目。物価上昇率を考慮すると、中国の実質的な賃金上昇率は確かに大きい。実際、今年春から夏にかけて華南を中心に日系企業への賃上げストが連鎖的に多発し、中には7割の賃上げ要求をのんだ日系企業もあるという。

この賃上げスト問題も反日感情が背景にあり、日本企業が狙い打ちにされやすい。中国ではストライキ権は憲法上で保障されている権利ではなく、ストの首謀者は社会擾乱罪に問われる可能性もあるが、日本企業相手であれば、当局も容認しやすく、成功する確率が高いとされている。労務問題の専門家として知られる常凱・人民大学労働人事学院教授は「日本企業は、労働者をきちんと人権をもった人間として対応し、話し合いに応じる企業文化があるので、権利を主張しやすい」と指摘。褒め言葉だが、結果的には日系企業は賃金アップを迫られる一方で中国企業は低賃金を維持でき、競合相手との厳しいコスト競争を余儀なくされる。